2年の猶予ができた今こそ、電帳法はインボイスを見据えて準備を進めるべきワケ:帳票ベンダー大手に聞いた!(3/4 ページ)
2021年12月11日、来年1月1日より施行される電子帳簿保存法(以下、電帳法)の「電子取引」義務化に2年の猶予が設けられることが正式に発表され、話題になっている。思いがけず対応スケジュールにゆとりが出てきた今こそ、あらためて考えたい、電帳法×インボイス制度対応へのベストプラクティスとは?
「適格請求書の発行を求められるのは、主にBtoBで仕事をしている場合のみです。そのため、BtoCで消費者を対象に仕事をしている免税事業者であれば、課税事業者になる必要はありません。ではBtoBの場合はどうかというと、企業(課税事業者)相手に仕事をしている以上、やはり登録申請はせざるを得ない環境になるのではないかと思います。そこで免税事業者の方に検討していただきたいのが『簡易課税制度』※2の利用です。
簡易課税制度は、中小企業の納税事務負担を軽減するための仕組みです。売り上げ時の消費税額をベースに、事業区分に応じて定められた“みなし仕入率”をかけたものを『仕入れ時の消費税額』とできます。要するに、仕入額控除額を通常よりも簡単に算出できるというものです」
国税庁では、インボイス制度において、簡易課税制度を利用している場合は「適格請求書などの請求書等の保存は、仕入税額控除の要件ではない」としている※3。納税にかかわる事務作業を大幅に軽減できるため、BtoB事業をしている免税事業者であれば検討の価値はあるだろう。
※2 制度を利用するためには、基準期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)の課税売上高が5000万円以下であること、また所轄税務署長に簡易課税制度の選択届出書を提出していることが条件となる(国税庁「No.6505 簡易課税制度」より)/※3 国税庁「VI 適格請求書等保存方式(令和5年10月1日〜)」より
こういったインボイス制度自体の企業理解は「徐々に進んでいる」と小野氏は見るが、今までは“まずは目先の電帳法(電子取引)対応が優先”という現場が多く、インボイスは後回しになっている印象もあったという。しかし、冒頭で説明した通り2年の猶予期間により事情が変わった。
インボイス制度は、説明してきた通り請求書の授受にまつわる制度であり、そして電帳法の電子取引の対象書類には、電子文書で受け取る請求書も含まれている。インボイス制度と電子取引は密に関係しており、今後は両対応できる環境が必須になるのだ。
インボイス制度と電帳法が交わる「登録番号」確認作業
では、電子取引についてもおさらいしておこう。電子取引で対象となるのは、インボイス制度に関係する請求書のほか、領収書、見積書、納品書、注文書……など“電子データで授受した取引情報”となる。
「インボイス制度で主役となるのは、主に請求書です。今後、適格請求書を電子で保存したい、授受したいとなれば、インボイス制度の施行日を待つまでもなく、現行においても電帳法の適用範囲になります。電子取引に猶予期間が設けられたとはいえ、23年12月31日には義務化になる予定です。インボイス制度と電帳法は、あわせて理解・対応を進めていかなければなりません」(小野氏)
専用のWeb-APIも配布中 準備は既に整った
従来の区分記載請求書と、新たに導入される適格請求書で最も大きな違いはやはり適格請求書発行事業者に付与される「登録番号」の記載だろう。
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