新幹線だけじゃない! JR東海の「在来線」はどうなってるのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(11/11 ページ)
JR東海といえば「東海道新幹線を運行する会社」「リニア中央新幹線を建設する会社」というイメージが強い。報道も新幹線絡みが多い。しかしほかのJR旅客会社と同様に在来線も運行している。そして「新幹線ばかり優遇して、在来線の取り組みは弱い」という声もある。本当だろうか。
不満というほどではないけれど、観光列車の少なさは寂しいと思う。ヒット作が「飯田線秘境駅号」だ。飯田線の豊橋〜飯田間には人里離れ道路も通っていない「秘境駅」が散在しており、それらの駅で長時間停車して巡る列車だ。大勢で訪れたら秘境の雰囲気はなさそうだけど、10年から運行開始されて以来、春と秋に10年以上も走っている。秘境の雰囲気はともかく、景色は良いし、長時間停車駅でおもてなしがあるなど人気のようだ。
中央線には「中山道トレイン」があり、「急行飯田線秘境駅号」と同様に窓の大きな特急形車両を使う。JR東海の在来線特急車両は窓が大きく、観光列車としても楽しめるけれど、もう少し遊び心があってもいい。かつては通勤電車を改造した「トレイン117」という観光車両もあったけれど、廃止されてしまった。
JR東海は東海道新幹線を絡めて「ずらし旅」「あいち冷やし旅」「推し旅」などユニークな試みを打ち出している。ゲーム『信長の野望・新生』や映画『仮面ライダー BEYOND GENERATIONS』とのタイアップも盛り上がったようだ。
そのノウハウでぜひ、在来線に生かしてほしい。筆者からは……そうだなあ。名松線に松阪牛を食べさせてくれるトロッコ列車が走ったらいいなあ。御殿場線で観光列車を走らせたら、東京から観光客を呼べそうだ。東海道新幹線で日本を背負って立つ気概があるなら、名古屋〜伊勢市間に特別な車両で「伊勢参拝特急」があってもいいと思う。JR西日本が紀勢線の西側に『WEST EXPRESS銀河』を走らせたように、紀勢線の東側にも楽しい列車を、ぜひ。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。
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