新幹線だけじゃない! JR東海の「在来線」はどうなってるのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(10/11 ページ)
JR東海といえば「東海道新幹線を運行する会社」「リニア中央新幹線を建設する会社」というイメージが強い。報道も新幹線絡みが多い。しかしほかのJR旅客会社と同様に在来線も運行している。そして「新幹線ばかり優遇して、在来線の取り組みは弱い」という声もある。本当だろうか。
ネットで見られる不満と期待
ここまで読んでいただいて、JR東海は在来線も頑張っているなと思っていただけたと思う。しかし、それでも不満の声があり、筆者もうなずける部分が一部ある。最もよく聞く、そして筆者も実感する話は「熱海駅接続問題」だ。
JR東日本の東海道線、湘南新宿ライン、上野東京ラインで熱海駅に着く。JR東日本区間の終点だから、ここからJR東海の電車に乗り換えなくてはいけない。できれば直通してほしい。乗り換えはたいてい10分以内でスムーズだけど、15両編成から降りた客が3両〜6両編成の電車に圧縮される。
その列車は接続列車が到着する前に待機しているから、席は埋まっている。利用客が多いから、座れないまま静岡まで行くにはちょっとツラい。せめて9両編成にしてもらいたい。あるいはグリーン車を連結してもらいたい。東京〜静岡くらい新幹線に乗ってくれ、という当てつけか……と青春18きっぷユーザーの恨み節である。
名古屋エリアもたいてい混雑している。もっと電車をたくさんつないでほしいと思うけれど、コロナ禍以前の数字を見ると、JR東海の名古屋圏の通勤時間帯混雑率は100〜120%で、東京圏や京阪神に比べると低め。名古屋圏では名鉄や近鉄よりずっと低い。適正な輸送量になっているようだけど、もう少し他社の客を奪う勢いで頑張ってもいいんだぞ、といいたくなる。
他社の客を奪うといえば、88年の三河塩津駅新設も戦略的で見事だった。もともと名古屋鉄道が蒲郡競艇場の近くに蒲郡競艇場駅を設置していた。競艇利用客は名鉄蒲郡線のお得意様だった。隣に東海道線の線路は通っていたけれど駅はなかった。そこに駅ができたから蒲郡競艇場駅の客は奪われた。もっとも、JRからの乗り換え需要があったようで、数字を追うと蒲郡競艇場駅の乗車人数も増えている。
それ以外のローカル区間は運行本数が極端に少ない。東海道新幹線や名古屋圏の鉄道と同じ会社が運営しているのかと思えば、そこに格差を感じるかもしれない。しかし、JR東日本もJR西日本も極端に運行本数が少ない路線はある。東海道新幹線があるからこそ、在来線の取り組みが薄まって見えるともいえそうだ。
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