新幹線だけじゃない! JR東海の「在来線」はどうなってるのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(9/11 ページ)
JR東海といえば「東海道新幹線を運行する会社」「リニア中央新幹線を建設する会社」というイメージが強い。報道も新幹線絡みが多い。しかしほかのJR旅客会社と同様に在来線も運行している。そして「新幹線ばかり優遇して、在来線の取り組みは弱い」という声もある。本当だろうか。
東海道新幹線・リニア中央新幹線については、東京・名古屋・大阪を結ぶという使命がある。それはJR東海にとって日本の経済を支える責任、そして誇りだ。役割が大きいだけに頑なな一面もあり、ときに冷たい印象も持たれてしまう。しかし在来線は国単位の大ごとにはしない。地域に密着した公共交通事業として、違うベクトルの誇りと責任がある。
その現れのひとつが新製車両の積極的な導入だ。冒頭の315系電車もそのひとつ。23年度までに中央線の名古屋〜中津川間の普通列車はすべて315系になる。これは中央線を優遇しているというわけではなく、むしろいままで中央線は古い車両が多く残留しているため、これら古い車両を一掃する狙いがある。中央線内の比較的新しい313系電車についてはほかの線区に転出し、そこで古い車両を押し出し廃車していくという。
その後、315系の投入線区は静岡地区にも投入される予定だ。報道公開された車両は8両編成だが、今後は4両タイプ、2両タイプも作られるとみられ、東海道本線や関西本線にも配属される設備投資額は約720億円とのことだ。
特急形車両も新型の投入計画がある。非電化路線用のハイブリッド式「HC85系」だ。ディーゼルエンジンを搭載しているけれども、このエンジンは発電機として使い、その電力でモーターを回して走る。余剰な電力や減速時に発電した電力はバッテリーに蓄える。
19年に試験車両として4両編成1本が落成し、21年1月に量産が決定した。22年度から23年度にかけて64両を新製し、紀勢線の特急「南紀」、高山線の特急「ひだ」用に配備される。事業費は約310億円だ。
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