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新幹線だけじゃない! JR東海の「在来線」はどうなってるのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(8/11 ページ)
JR東海といえば「東海道新幹線を運行する会社」「リニア中央新幹線を建設する会社」というイメージが強い。報道も新幹線絡みが多い。しかしほかのJR旅客会社と同様に在来線も運行している。そして「新幹線ばかり優遇して、在来線の取り組みは弱い」という声もある。本当だろうか。
JR東海にとって在来線の意味とは
国鉄改革法で基準となった平均通過人員4000人/日未満に当てはめると、高山線、身延線、飯田線もバス転換対象になってしまう。しかし鉄道廃止の動きはいまのところない。21年3月に発表された「2021年度重点施策と関連設備投資について(PDF)」においても、路線の見直しをにおわせる文言はなかった。
筆者は「JR東海が平均通過人員では計れない価値を見出している」と考える。地域輸送では心許ない成績であっても、在来線各線は広域・観光輸送で大きな役割を持っている。
高山線は名古屋〜富山を結ぶ特急「ひだ」がある。身延線も静岡と甲府を結ぶ特急「ふじかわ」がある。飯田線には特急「伊那路」、中央線は特急「しなの」、紀勢線は特急「南紀」、御殿場線は特急ロマンスカー「ふじさん」だ。寝台特急「サンライズ瀬戸/出雲」は名古屋駅に停まらないけれど、熱海・沼津・富士・静岡・浜松(下りのみ)に停車し、沿線エリアの人々に山陽・山陰・四国へ直行サービスを提供している。
つまり、JR東海は在来線について、岐阜・名古屋・豊橋・静岡エリアの通勤輸送と、東海道新幹線で行き届かないエリアの都市と観光地を結ぶ特急列車を重点施策に置いている。そしてこれらのエリアと特急列車を東海道新幹線と結びつけて地域に貢献するという姿勢だ。
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