旧車ビジネスが拡大するワケ レストアでクルマは新車状態に:高根英幸 「クルマのミライ」(4/5 ページ)
日産自動車とその関連会社や部品メーカーが、30年乗り続け26万キロもの走行距離に達した日産シーマを8カ月かけてレストア作業を行い、新車のような状態まで復元したことが話題になっている。
近年、旧車たちにクルマ好きの関心が集まっているワケ
そしてエコカー全盛の今、クルマを趣味として楽しむ人たちの中には旧車へと興味をシフトしている傾向が強まっている。現代のクルマは便利で快適ではあるが没個性でツマラナイと、無い物ねだりのマニアによるわがままなのかもしれないが、現代のクルマに魅力を感じなくなってきているのだ。
米国の25年ルールという制度も、そんな日本の旧車ブームをヒートアップさせている。それは右ハンドルなど米国市場向けのクルマではなくても、生産から25年が経過したクルマは輸入して登録することが認められる、というものだ。
米国ではJDM(ジャパン・ドメスティック・メイドの略=日本車を日本のパーツでカスタムするスタイル)など、コンパクトで高性能な日本車をカスタムして乗り回す文化があり、それと25年ルールで輸入が可能となったバブル期の高性能モデルたちの魅力が融合して、人気が急上昇したのだ。
自動車文化が確立している欧米では、クラシックカーを文化的遺産として尊重し、それを趣味として楽しむことを認めている。ポルシェやメルセデス・ベンツは相当に旧いモデルであっても、パーツ供給は充実しており(ただし毎年のようにその価格は上昇を続けているが)、50年代の車両であっても日常的に乗り回すことを可能にしているのだ。
一方、日本では生産終了から10年も過ぎれば、消耗品以外のパーツが徐々に欠品し、よほどの人気モデルでなければ故障してもディーラーでは修理不能になる。それにより新車への買い替えを促進するビジネスモデルだからだ。
だが、前述の米国での人気高騰も影響してか、ここ数年、日本でも旧車の扱いを見直す動きが自動車メーカーの中でも起こっている。レストアサービスや欠品していた部品の再販売など、特定のモデルに限定した話ではあるが、以前より待遇が改善されてきているのだ。
それでも80年代以前の旧車に関しては、日本でのパーツ供給は絶望的ともいえる状況となっている。しかしそれは日本における日本車での話で、日本国内での輸入車に関してはそこまで酷い状況ではない。イタリア車でもフランス車でも、欧州でパーツの流通がある程度あるため、専門の業者が部品を輸入販売している。
その最も顕著なケースが、クラシックミニだ。1959年に発売されたミニは、基本構造を変えることなく2000年まで販売されたが、英国では未だに新品のボディシェルが造られ、日本ではほとんどの部品が手に入る。日本はミニの人気が高かったことから専門店も多いからだ。そのためレストアや独自の部品改良なども行われている。
サーモスタットやウォーターポンプ、ドライブシャフトブーツといった輸入車として耐久性や信頼性に問題があった部品は日本の技術で作り直され、クルマの信頼性を高めているのだ。
関連記事
- 全固体電池は、なにが次世代なのか? トヨタ、日産が賭ける巻き返し策
全固体電池とは、電解質を固形の物質とすることで、熱に強い特性を得ることができる電池のことだ。以前は理論上では考えられていただけであったが、固体電解質でリチウムが素早く移動できる物質が見つかったことで、開発は加速している。 - 車検制度はオーバークオリティー? 不正も発覚した日本の車検の意義
自動車メーカーが、生産工場からの出荷時に行う完成検査で不正をしていたことが明らかになったのは2017年のことだった。そして今年は、自動車ディーラーでのスピード車検で不正があった。日本の乗用車に関する法整備は昭和26年(1951年)に制定された道路交通法、道路運送車両法によって始まっている。その中には幾度も改正されている条項もあるが、全てが実情に見合っているとは言い難い。 - ガソリンには、なぜハイオクとレギュラーがある?
どうしてガソリンにはハイオクとレギュラーが用意されているのか、ご存知だろうか? 当初は輸入車のためだったハイオクガソリンが、クルマ好きに支持されて国産車にも使われるようになり、やがて無鉛ハイオクガソリンが全国に普及したことから、今度は自動車メーカーがその環境を利用したのである。 - シフトレバーの「N」はなぜある? エンジン車の憂うつと変速機のミライ
シフトレバーのNレンジはどういった時に必要となるのか。信号待ちではNレンジにシフトするのか、Dレンジのままがいいのか、という論争もかつては存在した。その謎を考察する。 - 高速道路の最高速度が120キロなのに、それ以上にクルマのスピードが出る理由
国産車は取り決めで時速180キロでスピードリミッターが働くようになっている。しかし最近引き上げられたとはいえ、それでも日本の高速道路の最高速度は時速120キロが上限だ。どうしてスピードリミッターの作動は180キロなのだろうか? そう思うドライバーは少なくないようだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.