「今のうち、切っちゃえ!」と続く黒字リストラ──厳しくなる労働環境の中、生きる策:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/4 ページ)
希望退職を募る企業が増えた2021年。コロナ禍で業績不振な企業だけでなく、いわゆる「黒字リストラ」を行う企業も少なくない。終身雇用が崩壊し、厳しくなる労働環境の中、私たちはどのような心構えで働くべきなのか──?
日本の“お偉い人”たちは、「米国では〜」「米国と比べ〜」という言葉を好んで使います。しかし、米国以外の海外、すなわち欧州の企業には、日本同様の賃金カーブが存在します。
下図をご覧いただけば分かるように、イタリア、英国、フランスなども、日本よりは緩やかながらも、勤続年数が増えるとともに賃金は右肩上がりです
欧州の中でも長期雇用が一般的で、「日本型雇用」に近いとされるドイツと比べると、勤続年数10〜20年までは日本より賃金の上昇率が高いことが分かります。また、「勤続1〜5年」と「勤続30年以上」の上昇率を比較すると、日本が1.8倍で、ドイツは1.7倍とさほど変わりません。
それだけではありません。ご覧の通り、日本の時間当たりの賃金は、こんなにも低い!
この現実を社長さんたちは、なんと説明するのでしょうか。
リストラなどの人員削減は、短期的には企業に利をもたらします。しかし、長期的な目線で見れば、会社の土壌を壊す悪業でしかない。50歳になった途端、まるで“給料泥棒”のように言われ、あの手この手で肩たたきしているのを見た若い世代のモチベーションは下がって当たり前です。
「やがて自分もそうされるのか」と、優秀な社員ほどさっさと見切りをつけて会社を辞めていくでしょう。あるいは、「もらえるだけもらってやる」と自らを非戦力化し、“妖精化”してしまうかもしれないのです。
これまで世界中で行われた実証研究で、リストラが企業の繁栄につながるという結果は出ていません。一方で、リストラにより士気が落ちたことは多くの研究から確認されています。
つまるところ、「人」の可能性を引き出す経営を怠った経営者のツケを、社員が払わされているだけ。全体の賃金が上がらない中で、これまでたくさんもらい、会社の金で接待をし、いい思いしたであろう「バブル社員」を目の敵にすれば、多くの人たちの賛同を得られると踏んでいるにすぎないのです。
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