もはや「大企業誘致」は時代遅れ! 今、地方経済の活性化で「地場スーパー」が大注目なワケ:なぜ、「勝利の方程式」は崩れたか(4/4 ページ)
地方経済の活性化において、これまでは大企業を誘致し、工場の設立などを軸とした雇用創出などが「勝利の方程式」であった。しかし今、大きく時代が変わる中で、もはやそうした方程式は崩れつつある。そこで筆者が注目するのが、地場スーパーだ。
筆者は地場食品スーパーこそ、今後の地方経済の命運を握る存在だと考えている。
ホームセンター、ドラッグストアなどはご存じの通り、ある程度の“予選”を勝ち抜いた地方代表的な上位企業が存在し、決勝リーグ的にしのぎを削っている環境となっているのだが、食品スーパーの寡占度はそこまで高くない。複数県で上位シェアを持つ地域有力企業が現れてはいるが、中堅中小クラスながら、大手とガチンコ勝負をしている地場スーパーは各地に数多く存在する。
なぜそうなるのかといえば、日本の食品スーパーの生鮮部門が「インストアオペレーション」といって、各店舗のバックヤードで最終流通加工(小分け加工やパック詰めなどの作業)を行う仕組みを標準としているからだ。この方式はカットしてすぐに食品を提供できるため鮮度が高いのがウリなのだが、各店舗に加工工程が分散しているため非効率であり、規模の利益が働きにくくなる。つまり、中小チェーンでも鮮度、品質、品ぞろえで消費者の支持を得られるなら、大手にも十分対抗が可能ということだ(もちろん、大手の調達力と資本力に対抗するのは容易ではないのも確かだが)。
地域経済への貢献という観点からも地場食品スーパーの果たせる役割は大きい。
青果、水産、畜産の地産地消の拡大は、売場の鮮度に直結するだけでなく、地域の第1次産業を支える大きな力となる。地域の加工食品メーカー、日配品メーカーなども地域密着のスーパーが隆々としていてこそ、製品を地域に届けられるのであり、地場食品スーパーがその存在感を拡大できれば、地域経済への貢献度は存在感あるものになる。ただ、地場食品スーパーは「いい店」であっても、多くの場合、収益力が極めて低いため、持久戦での勝算はかなり難しく、「合従」して大手に対抗することは必要になる。
食品スーパー業界においては、アークスグループにおける合従が最も有力だ。同グループは、縮小する市場の中で、合従によってシェアを拡大するという「縮小拡大」策を標ぼうして、連合体として業界大手の一角を占めている。北海道のラルズ、福原が中心となり、道内の参加企業をエリア統合しつつ、北東北のユニバース、ベルジョイス、宮城のイトーチェーン、栃木のオータニなどが参加して5570億円規模の「合従軍」を構成し、八ヶ岳連峰経営と称している。
同グループはアークスによって経営統合されているが、参加各社の戦略の独立性は保たれており、各参加社は地域経済と個別に密着している。まさに漫画『キングダム』でも知られる、大国秦に対抗するために連合して戦う合従軍のごときイメージといっていいだろう。
巣ごもり需要の恩恵を受けていた地方の生活必需品小売業も、コロナ禍の終息後は間違いなく反動に見舞われ、いったん見えなくなっていた市場縮小の下方圧力に直面することになるだろう。市場縮小局面での再編は避けられない流れでもあり、決断を迫られるプレイヤーは急速に増えることになる。大手企業の傘下入りは短期的には従業員の処遇が改善することもあるとは聞くが、地域内での「合従」が進んでいくことの方が、地域経済の活力を維持する可能性は高いと見る。大手企業の製造拠点の雇用に依存し、大手小売業が一手に消費の受け皿となっているような地域経済ではその自立性は失われていく。願わくは、地場小売業の「合従」による生き残りで、地域の多様性が保たれる未来を期待したい。
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