もはや「大企業誘致」は時代遅れ! 今、地方経済の活性化で「地場スーパー」が大注目なワケ:なぜ、「勝利の方程式」は崩れたか(3/4 ページ)
地方経済の活性化において、これまでは大企業を誘致し、工場の設立などを軸とした雇用創出などが「勝利の方程式」であった。しかし今、大きく時代が変わる中で、もはやそうした方程式は崩れつつある。そこで筆者が注目するのが、地場スーパーだ。
昭和から平成の初めにかけて、製造業の成長を背景に、国内では製造業拠点を地方に誘致することによって、地方の就労者は第1次産業から製造業にかなりシフトしたが、00年ごろから、国際的なコスト競争が激化すると製造業拠点の海外移転が進み、製造業の雇用は縮小へと転じてしまった。
次の図表をみると1997年までは増加していた生産従事者が減少に転じているのが分かると思うが、その間に第1次産業従事者の多くが製造業に吸収されて、従事者数の減少が加速したことも見てとれる。
総務省統計局「就業構造基本調査」より筆者が作成。地方部の推移を示すため、総計より首都圏4都県、静岡県、愛知県、岐阜県、三重県、大阪府、兵庫県、福岡県の数を減じている。また、09年に統計基準の変更があったため、07年分は数値が2つ存在している
30年ほどの期間で第1次産業から雇用を移動させておいて、その後、就労機会が消失してしまったことで、多くの働き手はハシゴを外されたような状態になった。加えて、残っている製造業の雇用において非正規へのシフトも進んだこともあって、地方における雇用環境は結果的に悪化したといっていいだろう。
ここ数十年の大企業工場誘致は、地域の第1次産業の担い手を奪ってしまった上に、自立したな人材を大都市に流出させ、揚げ句には拠点の移転や閉鎖により雇用が失われ、地方経済を疲弊させてしまったという例が少なくない。地方が東京の出先として経済的に従属してしまったことで、域内で生み出された付加価値の多くが東京に吸い上げられ、地域で再投資されないという構造となり、結果、地域経済への還元が少なくなった。そして今、地域の消費経済にも大手小売業による寡占化の波が押し寄せつつあり、地域の消費経済の付加価値まで吸い上げられていく傾向が顕著になりつつある。
食品スーパー、ホームセンター、ドラッグストアなど地域消費の受け皿である小売業に関して、これまでは地場密着の企業が各地に割拠しているという状況にあり、その企業活動の付加価値の多くが域内で還流していた。しかし、こうした業界においても競争と淘汰が進みつつあり、少しずつ寡占化が進んできており、イオンのような全国展開する流通大手の勢力拡大によって、地場型小売業のシェアは縮小を続けている。コロナ禍の巣ごもり需要という追い風を受けて、地場小売業も一息ついている状況にはあるが、アフターコロナにこうした恩恵が剥落することになれば、人口減少による市場縮小の2年分が一気に顕在化し、その経営は一転厳しいものになる可能性は高い。
こうした状況下、寡占化に対抗して地方経済に最も貢献できる存在は何になるだろうか。
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