もはや「大企業誘致」は時代遅れ! 今、地方経済の活性化で「地場スーパー」が大注目なワケ:なぜ、「勝利の方程式」は崩れたか(2/4 ページ)
地方経済の活性化において、これまでは大企業を誘致し、工場の設立などを軸とした雇用創出などが「勝利の方程式」であった。しかし今、大きく時代が変わる中で、もはやそうした方程式は崩れつつある。そこで筆者が注目するのが、地場スーパーだ。
ゆめタウンのある通り沿いには、スシロー、くら寿司、洋麺屋五右衛門、マクドナルド、スターバックス、星乃珈琲店などの外食チェーンに加えて、地場系の外食店が多数、軒を連ねている。物販では、ゆめタウンのライバルであるイオン系スーパーのマックスバリュや業務スーパー、地場スーパー「鮮ど市場」もあり、コスモス薬品、ドラッグストアモリなどのドラッグストアもある。
少し離れた国道57号線バイパス沿いにも大型小売店が増えていて、ケーズデンキ、MEGAドン・キホーテ、HIヒロセ(スーパー+ホームセンター)、ザ・ビッグ(イオンのディスカウントストア)、大型ホームセンターのハンズマンなどが林立する。19年、合志市にはニシムタ(鹿児島のスーパー+ホームセンター運営)の大型店を核店舗とする敷地面積10万平方メートルの複合商業施設であるアンビー熊本がオープンするなど、買物、外食には正直全く困らない。それこそ、30分程度で行ける熊本市内の中心市街地に出掛ける理由がほとんどないほどの充実ぶりだ。
この熊本市の東側に広がる郊外エリアは、大企業製造拠点の誘致による雇用の確保、住宅地の整備、商業環境の整備が相まって、人口が増加するという好循環を生み出した。半導体最大手TSMCの大規模工場が誘致されれば、波及的効果も含め、今後も人口増加が維持される可能性は高い。
もはや成り立たない「企業誘致」起点の地域活性
今やほとんどの自治体が人口減少から抜け出せない状況の中、このような人口増加を実現している当エリアは、数少ない工場誘致の成功事例ということになるだろう。こうした事例は長年かけて産業インフラを整備してきたという地元の努力のたまものなのであろうが、大企業誘致による産業振興の最後の成功事例かもしれず、これから他地域への横展開ができるモデルとはいい難いだろう。この地域が自動車、半導体という産業を誘致したのは慧眼(けいがん)であることは確かだが、これまでの他地域での大企業誘致後の成否が、国内産業界の浮き沈みに左右されていることを考えると、地域の活性=大企業の工場誘致という勝利の方程式が成り立つ時代では、もはやないといえる。
関連記事
- 「国道16号」を越えられるか 首都圏スーパーの“双璧”ヤオコーとオーケー、本丸を巡る戦いの行方
コロナ禍で人口流出が話題となる首都圏だが、「国道16号線」を軸に見てみると明暗が大きく分かれそうだ。スーパー業界も16号を境に勢力図が大きく変わる。そんな首都圏のスーパー業界勢力図を、今回は解説する。 - イオンとヤオコー、スーパー業界の優等生がそれぞれ仕掛ける新業態の明暗
イオングループのスーパーにもかかわらず、トップバリュ製品を売らない新業態「パレッテ」。高品質が売りのヤオコーが新たに仕掛ける、低価格業態「フーコット」。両社の狙いはどこにあるのだろうか? - 競合は無印とニトリか 「イオン・キャンドゥ」タッグで再編進む100円ショップ業界の今
100円ショップ業界3位のキャンドゥが、イオンとの資本提携を発表したが、キャンドゥの狙いはどこにあるのか。もはや「100円」の商品だけでなく、さまざまな商品を扱う同業界の今を探る。 - オーケーに関する2つの誤解 関西スーパーが守ったものと失ったものとは?
買収劇で渦中のオーケーと関西スーパー。小売・流通業界に筆者は、オーケーに関する「2つの誤解」が問題を複雑にしていると指摘する。加えて、関西スーパーが守ったものと失ったものを解説することで、今回の騒動をひもといていく。 - マツキヨ・ココカラ不振の裏で、「肉・魚・野菜」の販売にドラッグストア各社が乗り出す納得の理由
コロナ禍の追い風が吹いたドラッグストア業界の中でも、売り上げ減だったマツキヨ・ココカラ。その背景には何があったのか。また、ドラッグストア各社でなぜ、「生鮮食品」の販売が広がっているのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.