離職率は2% 「退職ラッシュ」が続く中で、社員に選ばれる企業の舞台裏:米国は“大退職時代”(3/3 ページ)
米国では、コロナ禍をきっかけに働き方を見直す人が多く、「大退職時代」(Great resignation)と呼ばれている。しかしそんな中でも、社員の心をつかんで離さない企業が存在する。離職率は2%と低く、コロナ禍でも積極的に採用を行い、75%も社員が増加したというDuolingo社のCPOに話を聞いた。
──多くの社員が入社し、そして離職率も低いという背景には、どのような秘訣があるのでしょうか。
たくさんの施策を行いましたが、特別な秘訣や、この一策に尽きるというようなものはありません。ただ、常に「共感する」ということを念頭に置いて施策を考えていました。
パンデミックが身近な現実に起きてしまったわけです。不確実な世の中で、みんな怖い思いをしましたし、大切な人を失ってしまうこともある。そんな中、大切なのは「共感をすること」だと思いました。
仕事と人生は一つで、切り離すことはできません。ですから、「仕事をするときは、コロナのことを忘れてくれ」と強いることはできないわけです。だからこそ、社員の状況や考え方にどう共感していけるかを考えました。それが功を奏して、離職率が2%と低い数値だったのだと思います。
──成長スピードの速いIT業界やスタートアップ企業では、離職率は一定の数値を保ち、低すぎない方が良いという考え方もあると思います。2%という数値に対し、どのように考えていますか。
コロナ禍で、かつ当社のナスダック市場へのIPOもありました(2021年7月)。こうしたことが重なり、社員が安定を望んだ結果として離職率が下がったのではないかと考えています。
ただ、離職率2%という状態がそこまで健全なことだと捉えてはいません。
通常であれば、新しいスキルを持った人材が入社し、一定数の人材は出ていくということが望ましいと思います。22年以降には、普通の数字に戻っていくのではないかとは思っています。
いずれにしても、この不確実な「大退職時代」ともいわれている中で、従業員が「ここにいたい」と思える会社であったのであればうれしいです。
──日本もオールドファッションな体制の企業が多く、コロナ禍での働き方で多くの人がもがいている状況です。こうした中で、うまく働き、組織作りをしていくためには何が必要でしょうか。
一番大事なのは適応力だと思います。実際に今後何が起こるか、コロナの後に環境がどう変わっていくのかなどが分からない中で、最良のことを情報を集めて決めていく必要があります。自分の立ち位置をきっちりと定めた上で、何か変化が起きた時に対応することが重要だ思います。
組織作りには、まず計画を立てて、アイデアを出す。そして社員の意見や市況を鑑みて、変更や修正をしていくことが重要です。いくら計画を立てても、何か起こったら変更する、というのが現実です。事前に予測して考えて、社員に聞いて、反応を見て──フレキシブルに行動することが大事だと思います。
関連記事
- 崩壊寸前だったVoicy 離職率67%→9%に立て直した人事責任者が語る“人事の本質”
日本の音声コンテンツ市場の先頭を走る、音声メディア「Voicy」。3カ月で利用者数が2.5倍になるなど、コロナ禍で驚異的に成長している。しかし、たった1年半前は離職率が67%にのぼり、組織崩壊寸前だったという。そんな中でVoicyに入社し、抜本的な人事改革を行ったという勝村氏。一体どのような改革を行ったのか──? - 「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」 両者を分ける“4つのスキル”とは?
日本企業はなぜ、「部下を育てられない管理職」を生み出してしまうのか。「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」を分ける“4つのスキル”とは? 転職市場で求められる優秀な管理職の特徴について解説する。 - 「退職者ネットワーク」は人材不足のIT企業を救うのか? TISの取り組みは
企業の離職者やOB・OGの集まりを指す言葉「アルムナイ(alumni)」。海外ではアルムナイを貴重な人材として捉える意識が浸透しているという。日本ではまだ聞きなれない言葉だが、大手システムインテグレーターのTISでは、「アルムナイネットワーク」を作り、退職した人たちとつながりを持ち続ける取り組みを行っているという。話を聞いた。 - 「売り上げが落ちてもいいから、残業をゼロにせよ。やり方は任せる」 社長の“突然の宣言”に、現場はどうしたのか
「来年度の目標は、残業時間ゼロ」──社長の突然の宣言は、まさに寝耳に水の出来事だった。準備期間は1カ月。取り組み方は、各部門に任せられた。現場はどう対応したのか? - 「残業しない」「キャリアアップを望まない」社員が増加、人事制度を作り変えるべきでしょうか?
若手や女性を積極的に採用したところ、「残業はしない」「キャリアアップを望まない」という社員が増え、半期の評価ごとに成長を求める評価制度とのミスマッチが起きている──こんな時、人事はどうしたらいいのだろうか? 人事コンサルタントが解説する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.