離職率は2% 「退職ラッシュ」が続く中で、社員に選ばれる企業の舞台裏:米国は“大退職時代”(2/3 ページ)
米国では、コロナ禍をきっかけに働き方を見直す人が多く、「大退職時代」(Great resignation)と呼ばれている。しかしそんな中でも、社員の心をつかんで離さない企業が存在する。離職率は2%と低く、コロナ禍でも積極的に採用を行い、75%も社員が増加したというDuolingo社のCPOに話を聞いた。
──出社して話し合う文化から、突然リモートに移行したときは混乱が大きかったのでしょうか。
私たちの仕事は家からでもできるものだったので、(決断から)一晩でリモートに変更しました。シームレスに移行できたので、最初の数週間はうまく行っていると思っていました。「なんだ簡単じゃん!」と話していたほどです。
しかし日にちがたつにつれ、「あれ、こんな感じで良いのかな?」という雰囲気が漂うようになりました。社内のイノベーションが生まれづらくなってしまったからです。
そこで、プログラムを考えて、社員の手助けをしました。
──どのようなことをしたのでしょうか。
在宅勤務で必要になる機材費用をまかなったり、ツールキットを郵送したり、ガイドブックを作成したりしました。他にも、リモートでイベントを行い、社内のコミュニケーションを活性化したり、ランチで使えるクーポンを配布したりしました。
始めの頃は、テンションを上げて一風変わったイベントを行っていたんです。例えばみんなでTシャツを染めるイベント、料理の調理を同時にするイベントなどがありました。慣れてきてからは、もう少し小規模なイベントを実施するようになりました。
また、コロナ禍による影響や負担を最も大きく受けているのが、子どもを持つ親である社員たちです。そこで、カレンダーに「ペアレントアワー」と書き込めば、どの時間でも子どものために中抜けができ、誰も他の予定をかぶせないようにできるルールを作りました。
それから、一定期間、仕事のパフォーマンスが下がることも、あらかじめ伝えてもらえれば柔軟に許可するようにしました。例えば子供の夏休みやその他の忙しい時期に「この2カ月は、目標の80%しか稼働できない」と申し出があれば、80%相当の目標を設定しています。その間、給与は100%の額を保証しています。
加えて、社内で定めた額より給与が低い方には、ベビーシッター代・家庭教師代などに充てられる追加手当を支給しています。
米国では、コロナ禍の影響で育児や家事に携わる女性が仕事を辞めざるを得ないという状況がありました。Duolingoでは目標として「子どもがいる社員が、子どものために仕事を辞めなくてもいいように」と心掛けました。
米国では多くの女性が家族のために退職しましたが、Duolingoではこうした理由で辞めた人は私が知る限りはいません。今後もそうであればと願っています。
──コロナ禍以降、社員が75%増加したと聞きました。社員の採用には苦労しましたか。
どうやったらこれまでのような深いつながりを持てるかという心配をしていたのですが、驚くべきことに、あまり苦労しませんでした。採用からオンボーディングまで、基本的にリモートで行いました。
──社員の受け入れにも苦労はなかったのでしょうか。
コロナの少し前にオンボーディングのプランを作り直していたのがラッキーでした。適切な情報を適切なタイミングで出せるようになっていましたので、オンボーディングにもあまり苦労しませんでした。
新しく入社する社員がなじむための施策の中で特徴的なものとして、CEOと1on1をするプログラムがあります。これを当社では「Wine down」と呼んでいます。「wind down」=リラックスするという言葉と、ワインを掛けている言葉です。
実際に小さいワインボトルを社員の自宅に送って、リモートで社長とワインを飲んでリラックスしながら話すという取り組みです。こうして、会社の考えや雰囲気を理解してもらっています。
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