「名門銀行子孫」のあっけない幕切れ 新生銀行・SBI・金融庁、TOB騒動の背景に三者三様の失策:迷走・モラル欠如・皮算用(2/5 ページ)
TOBを巡る、新生銀行とSBIの騒動がひとまずの決着を見た。しかし、本当にこれでよかったのかといわざるを得ない幕切れとなり、疑問点は尽きない。今回の騒動を振り返りつつ、かかわった金融庁の打算を交えながら、総括を試みる。
重たいツケとは、約20年前の長銀時代の金融危機時に経営破綻し、再建に向けて国から注入された公的資金の約3500億円です。この公的資金のうち、新生銀行は大手行の中で唯一未完済であり、優先株から普通株に転換され国が大株主になっている、という異常事態にあります。
ではなぜ新生銀行だけが公的資金を完済できずにいるのでしょう。その理由は単純明快です。長銀破綻以降、リップルウッドをはじめ外資系ファンド資本下で、従来メイン業務であった大手〜中堅法人取引業務から個人リテール業務への転換をしたかと思えば、不動産関連の投資銀行業務へ傾倒するなど、雇われ経営者たちの二転三転する経営方針に翻弄されたからに他なりません。
そして、リーマンショック時に不動産関連事業が巨額赤字を生むに至って、他の大手銀行から大きく後れを取ったわけなのです。金融危機時に同じように破綻したあおぞら銀行やりそな銀行が続々公的資金を完済していくのを尻目に、新生は一行取り残されてしまいました。
話を戻しましょう。今回のTOB価格は2000円、TOB前の株価に至っては1200円台。公的資金を、新たな税金負担なく完済するには、7450円にまで株価を持ち上げる必要があります。これはもはや限りなく不可能に近いといわざるを得ない状況であり、ここまで株価を下げてしまったがゆえに容易にTOBの対象になってしまったともいえるでしょう。
全ての責任は、先述の通り、歴代外様経営者たちの戦略的迷走にあったと考えます。SBI傘下に入ることで、果たして公的資金の完済ができるのか。歴代経営者が辛酸をなめてきたこの課題に新たに対峙する実質的新経営者、SBI総帥である北尾吉孝氏のお手並み拝見といったところではあります。
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