注文後、10分で届く? 海外で急拡大する「ダークストア」は日本でも流行るのか:3社に聞いた(4/5 ページ)
欧米で「Qコマース(クイックコマース)」が話題になっている。注文から30分以内をメドに日用品などを配達するサービスで、その多くは、消費者が立ち入ることができない「ダークストア(配達専門店)」を活用している。同事業を手掛ける3社の戦略と展望を聞いた。
12拠点、3500点まで拡大する「パンダマート」
フードデリバリー事業では、Uber(ウーバー)やウォルトより遅れて日本に進出したものの、ダークストアの展開は早かったデリバリー・ヒーロー・ジャパン。12月末現在、大阪、京都、東京、神奈川など全国12拠点でダークストアがオープンし、約3500点の商品を扱う。12月10日からは、卵、牛乳、ヨーグルトといった冷蔵食品の販売もスタートし、ビールやワインなどの酒類の販売も、名古屋、大宮の拠点限定で始まったばかり。
「パンダマートの事業は、シンガポールをはじめとした他国ですでに広く展開しており、日用品のQコマース需要は明らかです。当社のエコシステムを回すためにもパンダマートの展開は必須だろうと。フードデリバリーは昼と夜に需要がかたよるため、配達時間を分散させることで、ライダーにとっても、当社にとっても良いと考えました」(デリバリー・ヒーロー・ジャパン 新規事業開発本部 本部長・執行役員 佐藤丈彦氏)
パンダマートは送料220円で、30分以内に商品を配達する。商品を配達するのは、フードデリバリー事業と同様のライダーで、注文が入るとAIが瞬時に最適なライダーを割り当て、オーダーを飛ばす仕組みだ。ライダーが店舗に向かって自転車をこいでいる最中、店舗ではピッカーが高速でピッキング。ライダーが到着するまでの2分間で袋詰めされた商品が用意され、ライダーは店舗に到着するやいなや商品をピックアップし、顧客に配達するという。
「テクノロジーとアナログの融合により、30分以内での配達が実現できています。ミスを防ぎやすいバーコード式の端末の利用に加え、最短でピッキングできる導線づくりや商品の配置もポイントです。端末では、注文が入ってからパッキングが終わるまでのすべての行動が細かくトラックされていて、どこで遅延が発生したかの原因分析も行い、改善に務めています」(佐藤氏)
価格帯はスーパーよりも高いが、総合的にお得に感じられるサービス設計にしているという。生活のなかで予想しやすい30分以内の配達という点が大きく、例えば、かさばるトイレットペーパーやペットボトルの飲料、アルコール、アイスクリームなどは注文が多いとか。主な利用者は20〜40代の女性で、夕食前の時間帯がピーク。一部の都市では、飲食店の運営者らしき利用者からの注文もあったそうだ。
取材時は「2年以内に100店舗の開設と5000点の商品数を目標にしている」との回答だったが、デリバリー・ヒーロー・ジャパンは、12月22日、日本事業を撤退すると発表。「日本市場での競合環境が著しく変化し、他社の参入や配達員の安定した確保が困難であることから、今後の日本国内のビジネス展望に大きな影響を及ぼした。同時に、海外でのさらなる展開や新たな投資の機会なども選択として検討する必要が出てきた」と売却の理由を示した。報道によれば、22年3月末までに事業を売却する予定だ。
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