ユニクロもついに値上げか? 食品メーカーが次々決断する中、アパレルだけが踏み切れない“不自然”な理由:磯部孝のアパレル最前線(3/5 ページ)
食品、日用品を中心に値上げの動きが急速に高まっている。緊急事態宣言が解除され、アパレル消費に復活の兆しが見え始めている中で冷や水を浴びせかねない今回の値上げ圧力。しかし、アパレルでは、簡単に値上げ宣言しにくいのが現状だ。その理由について筆者はこう分析する。
増収増益も改善しなかった来店客数
ユニクロは、値上げ施策についてうまくいかなかった過去を持っている。それは消費税が5%から8%に上がった2014年のことだ。ユニクロが値上げを開始した年から、値下げを敢行することになった16年までの国内既存店の売上高と客数、客単価の推移をグラフ化してみた。
14年8月から価格を順次5%前後引き上げると発表し、同年の秋冬商品から値上商戦が始まった。しかし、この期間を対象としたファーストリテイリングの15年8月期決算では、国内ユニクロ事業は売上収益が前期比9.0%増の7801億円、営業利益は前期比10.3%増の1172億円と増収増益で、この時点での過去最高の業績を記録する。
ヒートテック、ウルトラライトダウン、ウールセーターといった冬のコア商品の販売実績が計画を上回る勢いで売れたことが要因のようだ。その一方で、客数は前年同期比を下回る月度が続いていた。
15年8月期の好決算が迎えられた背景の一つには、円安による外貨建資産などの換算差額が増え、金融損益が162億円と前期の50億円から大幅に増えたこともある。先ほどの図表に円/ドル為替相場(月中平均値)を重ね合わせたグラフをご覧いただきたい。
14年11月に米国の利上げによって急速な円売りドル買いが進み、一気に7.83円の円安となった。ユニクロの値上げ発表ともに、為替が円安に振れたことによる減損分は、値上げ価格によっていくらかは吸収できたのではないか。
なかなか改善しない客数減の動きについては、「値上げによる客離れが起きた」と考えていたのだろう。値上げ政策に限界を感じた出来事として考えられるのは、1年のうちで最も売上金額の母数が膨らむ11月と12月(15年11月91.1%、12月88.1%)に、2カ月連続で既存店売上高を落としたことだ。
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