ユニクロもついに値上げか? 食品メーカーが次々決断する中、アパレルだけが踏み切れない“不自然”な理由:磯部孝のアパレル最前線(4/5 ページ)
食品、日用品を中心に値上げの動きが急速に高まっている。緊急事態宣言が解除され、アパレル消費に復活の兆しが見え始めている中で冷や水を浴びせかねない今回の値上げ圧力。しかし、アパレルでは、簡単に値上げ宣言しにくいのが現状だ。その理由について筆者はこう分析する。
ユニクロ幹部「一部製品の値上げも視野に」
一般的にアパレルビジネスにとって、春夏より秋冬商戦の方が売上高構成比は高い。それは客単価が大きく変わるからで、シャツやTシャツが中心の春夏よりも、防寒アウターやニット製品が中心に売れる秋冬の方が客単価は高い。特にユニクロにとって11月は年2回催される大型セールイベントを仕掛ける月度で、秋冬商戦においてこの2カ月の売上高の比重は高いと想像できる。
実際ユニクロは、16年春夏商品から値下げ施策(毎日お買い求めやすい価格戦略)に転換。上記の出来事がきっかけになったのではないかと推察できる。そして、肝心の客数については16年秋冬商戦あたりから上向き始めて、2017年には完全に復調した。
21年4月の消費税内包施策(実質約9%全品値下げ)から、国内既存店売上高がなかなか振るわないユニクロは、値下げ率の縮小や値下げ品番を減らすことによって対策を講じてきた。
国内最大のチェーンストアであるユニクロにとっても、先に触れたような外的要因を避けることは出来ない。先日もファストリの幹部が、日本経済新聞の取材に「一部製品の値上げも視野に入れている」とコメントがあったほどだ(日本経済新聞21年12月17日付 朝刊)。
偶然の一致か、現在も米国利上げ発表もあって21年1月に平均103.74円をつけていた円が113円代周辺を推移する円安局面にあるのは、14年当時と同じ環境が整いつつある。
さて、ファストリが今日まで作り上げてきた大量生産、大量陳列、大量消費といったビジネスモデルとの決別となるのか。日本最大級のチェーンストアであるユニクロが値上げに踏み切ると、業界に与えるインパクトも大きいだけに注目していきたい。
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