ユニクロもついに値上げか? 食品メーカーが次々決断する中、アパレルだけが踏み切れない“不自然”な理由:磯部孝のアパレル最前線(5/5 ページ)
食品、日用品を中心に値上げの動きが急速に高まっている。緊急事態宣言が解除され、アパレル消費に復活の兆しが見え始めている中で冷や水を浴びせかねない今回の値上げ圧力。しかし、アパレルでは、簡単に値上げ宣言しにくいのが現状だ。その理由について筆者はこう分析する。
行動抑制の緩和によってうまれる消費活動に、大いに期待を寄せたいところだが、年末年始の帰省客による新幹線の予約状況も例年比の3割くらいだと聞くし、帰省そのものを迷っている人も3割くらいいるという民間のアンケートにもうなずける。
そこに、新たな変異種であるオミクロン株の感染拡大から、外国人の入国を一斉ストップという施策にまで発展している現在。オミクロン株の性質が分かるまでの処置とはいえ、新型コロナ全体に対する人々の警戒感は、しっかりと残っているともいえる。
そんな不安要因も抱えつつ、アパレル業界が長年抱えているオーバーカンパニー、オーバーストアからくる供給過多と、生活者の節約志向とのミスマッチからうまれているアパレル不況。今回の値上げ措置にも耐えられるアパレルビジネスの英知が試される絶好の機会となりそうだ。
著者プロフィール
磯部孝(いそべ たかし/ファッションビジネス・コンサルタント)
1967年生まれ。1988年広島会計学院卒業後、ベビー製造卸メーカー、国内アパレル会社にて衣料品の企画、生産、営業の実務を経験。
2003年ココベイ株式会社にて、大手流通チェーンや、ブランド、商社、大手アパレルメーカー向けにコンサルティングを手掛ける。
2009年上海進出を機に上海ココベイの業務と兼任、国内外に業務を広げた。(上海ココベイは現在は閉鎖)
2020年ココベイ株式会社の代表取締役社長に就任。現在は、講談社のWebマガジン『マネー現代』などで特集記事などを執筆。
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