「ホテルの賞味期限は10年」 インバウンド向けに急増したホテルが直面する“厳しすぎる”現実:瀧澤信秋「ホテルの深層」(4/4 ページ)
コロナ禍で意外に堅調だったカップル需要。コロナ禍前であればレジャー(ラブ)ホテルが十八番とされていたが、過去にさかのぼると、伝統的な高級ホテルでも午後チェックイン/深夜にチェックアウトというケースは散見されたという。
ホテルの賞味期限は10年
業界のセミナーなどで筆者が時々話すのが「ホテルの賞味期限は10年」ということだ。多額の費用をかけて誕生するホテルだが、それだけにもちろん数十年といったスパンでの運営が前提となる。
賞味期限という言葉には、「奇抜なハードとはいえ10年くらいすると新鮮味はなくなってくる」といった意味もある。また、実際にあらゆる場所で補修が必要になっていくし、安普請(やすぶしん)ほど経年による後遺症も重い。宿泊特化型ホテルを中心に供給過剰である現状について触れたが、それはすなわち数十年後には、多くの経年ホテルを誕生させることも意味する。
コロナ禍による淘汰が明らかにしたことがある。それは、ハリボテ的な見た目のカッコ良さではなく、質の勝負が重要になってきているということだ。ビジネスの持続可能性という観点からも、質の勝負が今後より一層求められるようになるのではないか。10年を経ると表向きな装いから質があらわになる。20年後に熟成しているホテルはどのくらいあるのだろうか。
著者プロフィール
瀧澤信秋(たきざわ のぶあき/ホテル評論家 旅行作家)
一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。
日本を代表するホテル評論家として利用者目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。その忌憚なきホテル評論には定評がある。評論対象は宿泊施設が提供するサービスという視座から、ラグジュアリーホテルからビジネスホテル、旅館、簡易宿所、レジャー(ラブ)ホテルなど多業態に渡る。テレビやラジオ、雑誌、新聞等メディアでの存在感も際立ち、膨大な宿泊経験という徹底した現場主義からの知見にポジティブ情報ばかりではなく、課題や問題点も指摘できる日本唯一のホテル評論家としてメディアからの信頼は厚い。
著書に「365日365ホテル」(マガジンハウス)、「最強のホテル100」(イースト・プレス)、「辛口評論家、星野リゾートへ泊まってみた」(光文社新書)などがある。
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