「ホテルの賞味期限は10年」 インバウンド向けに急増したホテルが直面する“厳しすぎる”現実:瀧澤信秋「ホテルの深層」(3/4 ページ)
コロナ禍で意外に堅調だったカップル需要。コロナ禍前であればレジャー(ラブ)ホテルが十八番とされていたが、過去にさかのぼると、伝統的な高級ホテルでも午後チェックイン/深夜にチェックアウトというケースは散見されたという。
コロナ禍で淘汰される宿泊施設
観光需要の高まりによる活況から一転したコロナ禍の宿泊施設。誤解を恐れず表現すると“淘汰”されてきたのも確かだ。
本来ならすでに需要のなかったような、経営基盤も脆弱な個別の経年施設がインバウンド需要に支えられ、生きながらえてきたのは事実であった。あるいは、インバウンドありきで拙速な開業・展開を進めた宿泊特化型ホテルも実際淘汰されている。そうした傾向はまだまだ続いていくと考えられる。
いずれもコロナ禍で廃業した施設の傾向と見られているが、実際には、経営基盤の脆弱さに加え、インバウンド需要の消失で経営が立ち行かなくなったという側面がある。
業界にとって“カンフル剤”ともいえるGo Toトラベルや自治体の観光需要の喚起施策も、延命治療的な効果はあっただろう。山あれば谷あり、インバウンド活況からのコロナ禍による需要低迷はホテルの実力をあらためて露呈させた。
コロナ禍は生活様式や旅のスタイルも変化させた。これまでの旅行の常識へ完全に戻ることはないのだろうが、来たるべきインバウンド需要の回復を見越した新規開業が続いている。
ラグジュアリーホテルについては今後も一定のマーケットがあるというのが業界内でよく言われる話だ。一方で着目すべきは、供給過多のフェーズにある宿泊特化型ホテル。
インバウンド活況下で増え続けた宿泊特化型ホテルにとって、“差別化”は重要なキーワードであったが、奇抜でセンセーショナルなコンセプトやアイデア勝負といったプランの打ち出しは、もはや当たり前になりつつある。
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