「人事データを人員配置、退職予測に使いたい」──その前に準備すべき3つのこと:連載「情報戦を制す人事」(1/3 ページ)
「人事データを活用して戦略的な配置や退職予測を行いたい」と考える企業は多いが、当初の目的通りの効果を得られないケースも少なくない。目的達成に向けて頓挫することなく、有効に活用するためには?
連載「情報戦を制す人事」
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ここ数年、人事部門の方から「人事データを活用して戦略的な配置や退職予測を行いたい」というご相談をいただくことが増えました。中期経営計画に人事データ活用を前提とした人事施策を盛り込むケースも増えており、人事の領域でもデータ活用が経営課題として捉えられてきています。
一方で、データ活用のためのプロジェクトを始めたり、タレントマネジメントツールを導入したりしても、当初の目的通りの効果を得られないケースも少なくありません。
本記事では、人事データの活用が急激に求められている背景について整理したうえで、目的達成に向けて頓挫することなく、有効に活用するためのポイントについて解説します。
人事データ活用が求められる背景
DXに代表される、デジタル化とデータ活用の流れは、人事の世界においても大きなトレンドとなりつつあり、人事データ活用の必要性が高まっています。
以前、「注目の『人的資本経営』入門編 財務諸表には表れなくても、企業が向き合うべき理由」でも記載したように、現代の変化の速さと国際的な競争に対応するためには、これまでの「モノ・カネ」に代表される有形資産だけではなく、変化に対応するためのアイデア、テクノロジー、ブランディングといった無形資産とそれを生み出す「ヒト」の力が企業価値に直結するため、重要性が増しています。
また、人的資本に関する企業の考えや進捗、取り組みを開示する責任も、ISO30414に代表される人的資本の開示指標やコーポレートガバナンス・コードの改定という形で求められつつあります。
経営課題と人事課題が緊密化する中、企業人事は、管理的な機能からより戦略的な機能へと転換が求められています。その実現においては、人事の領域でも、HRテックの進化を背景として、データ・事実に基づいた判断精度の向上や勘に頼らない科学的な意思決定アプローチが必要とされ始めています。
また、ジョブ型人事制度の導入や、リスキル(リスキリング・学び直し)でクローズアップされるデジタル人材の育成のように、人材活用を活性化させて3年後、5年後の企業の成長につなげようとする取り組みが増加傾向にあります。
人事施策の進捗、ギャップ把握、効果的な育成・適所適材の配置の実現を行うためには、人事データの活用が必須です。人事部門だけでなく経営層から現場管理職に至るまで、実務に必要な情報の提供が求められているといえます。
人事データ活用が進まない? 活用を阻む3つの壁
そうした中で、人事システムの刷新やタレントマネジメントシステム、BIツールの導入を検討・実施する企業も増えている傾向にあります。例えば、矢野経済研究所の調査によれば、タレントマネジメントシステムの市場はここ2年で1.5倍近くに急拡大しています。
一方で、「タレントマネジメントシステムを導入したにもかかわらず、意図した効果が見られない」「BIツールを導入したものの、用意したダッシュボードが活用されない」といった、人事データ活用の難しさを感じる企業も多いのではないでしょうか。
一言で人事データといっても、その範囲は個人情報、発令、給与、評価、勤怠、教育・研修、ストレスチェック……と多岐におよび、全てがデータ化されているとはいえないでしょう。いざデータ活用を始めようとしたら、管理されていると思っていたデータが存在しない、利用するに値しない、ということもよくあります。
人事データに限らず、企業内のデータ活用を推進するにあたっては、下記のような問題が存在していることが多いです。
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