「人事データを人員配置、退職予測に使いたい」──その前に準備すべき3つのこと:連載「情報戦を制す人事」(2/3 ページ)
「人事データを活用して戦略的な配置や退職予測を行いたい」と考える企業は多いが、当初の目的通りの効果を得られないケースも少なくない。目的達成に向けて頓挫することなく、有効に活用するためには?
(1)データ活用の目的が明確でないため適切な推進体制が組まれない
データ活用を推進することが決定される(最近は中計などで掲げられることも多くなっている)と、システムの選定が行われ、プロジェクト体制が組まれます。ですが、この時点でデータ活用で解決したい課題が明確になっていない、あるいはデータ活用で実現したいことが不明瞭な状態で、スタートが切られることがあります。
結果として、「データ活用」という方針自体が目的化され、プロジェクトメンバーがデータを利用して実現したい本当の目的を決定したり、システムの導入自体がゴールになったりするケースです。
プロジェクトを推進する中で目的・ゴールの議論が行われ、経営や人事部門長との対話の中でブラッシュアップと認識合わせが進み、導入体制や現場部門への説明などにおける協力が得られればよいですが、プロジェクトチームに丸投げされ問題が解決しないまま頓挫することも多いのではないでしょうか。
(2)データ活用を推進できる人材が不足している
人事部門のなかで、人事データ活用を始める、必要なシステムを導入する場合に、誰がどのような形でプロジェクトを開始することになるでしょうか。
そもそも、システムを利用したプロジェクト推進の経験スキルを部内で保有しておらず、また既存の人事システムのデータ構造やデータ状況について十分に把握できていないことも多いのではないでしょうか。結果として、目的に対する適切なタスクやスケジュールを計画できない、計画通りに実施できないリスクにつながります。
そのため、企業によっては経営企画部門や情報システム部門、あるいは昨今新設されていることが多いDX推進室がプロジェクトを推進したり、外部からコンサルタントを参画させてプロジェクトを行うことになる場合も多いでしょう。
ただ、その場合は人事部門からプロジェクト参画への主体性が失われ、策定された目的やデータ収集・分析の実運用が実態と乖離するという可能性が高まります。
この場合、せっかく導入したタレントマネジメントシステムやBIツールが活用されないというリスクがあるでしょう。
(3)人事データ活用を前提としたデータ蓄積・保有状況になっていない
多くの企業では、これまで蓄積された人事データの多くが異動情報の登録や給与支給、勤怠管理といったオペレーションを実現するために存在しています。従って、データはオペレーションをより高速に、より円滑に行われることを前提として存在していることが一般的で、人事データを活用するという観点で適した形で存在しているとは限りません。
また人事データと一言で言っても、異動や給与、勤怠、評価、研修と利用者も利用シーンも全く異なり、全てが同一のデータベースに存在していることはまずありません。
そもそも、データ化されていない、データベース化されていない情報もかなり存在しているのではないでしょうか。一般的には下記のような課題が存在していると考えられます。
- 人事データが集まっていない
→発令業務や給与支給に関係しない人事情報はまったく入っていない
- 人事データが標準化されていない
→例えば「管理職」「課長クラス」を決定づけるための発令情報が、グループ各社によってバラバラだったり、判断できなかったりする。
- 人事データが散在している
→勤怠システムを使っていない子会社はExcelで管理している、過去の研修履歴はPDFの台帳を見ないと分からない
- 人事データが抽出できない
→汎用のレポート機能は専門的な知識がないと決まったデータしか出力できない
こうした課題をおろそかにしたままで、単純にシステムを導入したり、壮大なデータ活用プロジェクトを始めたとしても、有効的なデータ活用を実現することは困難です。
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