“ダサい”と評判の4℃、5年連続の業績後退を「コロナのせい」で片付けるべきでない理由:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)
ネックレスやリングをはじめとした宝飾品ブランドとして有名な、「4℃」を手がけるヨンドシーホールディングスの業績が悪化を続けている。
ユニクロはなぜ「ダサい」イメージを払拭できたのか
実は、日本を代表する企業であるファーストリテイリングが運営する「ユニクロ」も、かつてはダサいというイメージに悩まされた時代がある。
ユニクロは、1990年代に「SPA」と呼ばれる方式で少数商品にターゲットを絞り、安価で大量生産するというモデルを採用していた。これが2000年近辺のフリースブームの後押しもあって大きく売上高を伸ばしてきたのである。
しかし、ユニクロで服を買ったとばれてしまう「ユニバレ」や、ユニクロ製の服が思わず被ってしまう「ユニ被り」といったネガティブワードが徐々に業績をむしばんでいった。これにより、「ユニクロ=ダサい」という印象がつき、01年以降の2年間で約1088億円も売り上げを落としたのだ。
ここで同社が行った対応は「リブランディング」だ。これまでのSPA方式の生産を改め、時代にあった流行を取り入れた商品を少量ずつ生産する方式に切り替えたのである。
これにより、安くてカジュアルというこれまでの強みを取り戻し、「ユニクロを着ても恥ずかしくない」という印象を与えることに成功した。04年から売上高は回復し、06年にはフリースブームなどでピークアウトした03年の4186億円を超えて4489億円まで増加。今日では2兆円を超える売上高にまで成長したのである。
リブランディングと聞くと、商品の本質ではなく、見てくれの方に手を加えるという点で小手先の手法に思えるかもしれない。しかし、ブランド価値の毀損(きそん)原因が品質でないのであれば、商品に改良を加えるよりもはるかに効率的に業績を改善させることも可能だ。
また、一度ブランドにネガティブな印象がつくと、実際に製品を使用していないにもかかわらず、食わず嫌いであったり便乗的にそのブランドに対するネガティブな口コミを拡散させるという悪循環に陥ることもある。4℃の印象を復活させるためには、新たな視点や顧客体験を通じて、自社の製品に新しい価値をアピールしていくことが求められてくるだろう。
筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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