脱東芝の「レグザ」、国内トップシェア争いまでの復活劇:家電メーカー進化論(6/9 ページ)
2006年に東芝の薄型テレビブランドとして誕生した「REGZA」は、高画質や多機能で高い支持を集めた人気ブランド。しかし15年頃からの不正会計疑惑により、テレビ事業は18年に中国のハイセンスグループに売却。激動を乗り越えてきた「REGZA」のこれまでと今後について、TVS REGZA 営業本部の2人に話を聞いた。
テレビに集中したミニマムな体制で、20年から黒字化
そして20年には、10年以降10期ぶりの黒字化を実現する。この黒字化は、ハイセンスグループに入ったことによる調達や金型コストの低減に加えて、営業面で変化も大きいという。
分社化やその後のハイセンスグループ入りにより混乱していた、商流やオペレーションも改善が進んでいる。販売会社を通さずに、量販店に直接販売する商流変更は、研究開発から製品設計、そして営業・販売まで、一貫したワンストップオペレーションが可能となった。さらに東芝時代にはあり得なかった販売現場の声が、直接本村さんにまで届くようになり、フィードバックも早くなったという。
「TVSレグザが“映像機器専門の会社”になったことで実現できました。私が率いる営業本部には量販店との商談担当、営業、マーケティング、日本全国の支店の担当者まで全員が所属しています。ですから現場の声、お客様の声がすっと入ってくるのです」(笹川さん)
「北海道から九州まである日本中の支店には、製品や販売に精通したMD(マーチャンダイザー)がいますが、彼らは何かあるとダイレクトに連絡してくれます。東芝時代、販売会社のスタッフが直接連絡してくるなんてことは、めったにありませんでした。お店やお客さんに聞かれたこと、製品への質問、それにすぐに答えられる体制は強いです」(本村さん)
さらに面白いのは、カタログから量販店の売り場デザインまですべて社内で手掛けるようになったことだ。
東芝時代は、カタログなどの制作は事業部が代理店にほぼ任せていた。しかし、任せきりではお客さんや販売店の声は反映しにくいカタログになる。今はカタログのコンセプトや訴求ポイントなどの整理をいちから全て社内で進めているため、販売現場やお客さんの声を反映したカタログができる。同じく売場づくりも、開発から販売まで一気通貫でやっているメンバーが作るため、レグザの機能をしっかり体感できる空間になったという。
「ファッションブランドのVMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)店頭展示を作っていたようなスタッフも入社し、セールス担当と一緒に売場づくりをしてくれています。内製化によって、本当にレグザの良さが伝わる売り場ができました」(笹川さん)
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