脱東芝の「レグザ」、国内トップシェア争いまでの復活劇:家電メーカー進化論(7/9 ページ)
2006年に東芝の薄型テレビブランドとして誕生した「REGZA」は、高画質や多機能で高い支持を集めた人気ブランド。しかし15年頃からの不正会計疑惑により、テレビ事業は18年に中国のハイセンスグループに売却。激動を乗り越えてきた「REGZA」のこれまでと今後について、TVS REGZA 営業本部の2人に話を聞いた。
コロナ禍の大ヒットで、トップシェア争いが圏内に
20年にはヒット商品も生まれた。それが、2KでHD画質を実現するエントリーモデル「V34シリーズ」だ。このクラスのテレビは画質や機能よりも、販売価格が常に最重視されるため、メーカーとしてもコストダウン以外にできることが少ない。
しかしレグザでは、あえてコストを掛け、YouTubeやNetflixが見られるネット動画機能を搭載。さらにネット動画をキレイに表示できる高画質化機能も内蔵した。この製品を「ネット動画をとことん楽しむプライベートテレビ」として訴求したところ、高い支持を得たのだ。
エントリークラスのハイビジョン液晶レグザ「V34シリーズ」は、主要なネット動画サービスに対応。さまざまな高画質処理で精細感をアップし、ノイズを低減。高いコントラストと自然な色が再現できる。「ネット動画ビューティHD」機能を搭載
「コロナ禍になってテレビの視聴スタイルが明らかに変わりました。ネット動画視聴時間が延びていて、1日90分近く見られるようになりました。テレビを見ているといっても、実際はYouTube、Amazonプライム、そしてNetflixを見ていると分かったのです。コロナによって、ネット動画の視聴が急激に加速しました」(本村さん)
TVSレグザの開発チームでは、実はコロナ前からテレビのネット動画視聴時に特化した高画質化技術に取り組んでいた。本村さんは「ブルーレイや地デジの映像を高画質化するだけではもう古い。これからはネット動画対応だ」と、エンジニアに指示を出していたという。そこにコロナ禍が訪れたというわけだ。
「当初、V34シリーズではネット動画機能をアピールしようと考えていませんでした。しかしコロナ禍になり、視聴スタイルの変化が分かったため、『ネット動画を楽しむためのプライベートテレビ』として仕上げました」(本村さん)
低価格帯のテレビにネット動画に対応しているモデルがほとんどなかったことから、V34シリーズはコロナ禍の巣ごもり生活にマッチし、大ヒットを記録する。さらに、このモデルのヒットをきっかけに、大画面モデルや有機ELテレビの売り上げも伸びていった。
さらにレグザシリーズの販売が好調な理由の1つに、幅広いラインアップが挙げられる。現在レグザは、HD画質の小型モデルから、4K有機ELの大型モデルまで、31モデルを用意している。これはレグザシリーズでも過去最大だ。これだけのラインアップを用意できるのは前述の通り、ハイセンスグループの一員として、リソースを有効活用できるためだ。
販売店もラインアップが多いため売りやすいという好循環を生んでいる。これらが組み合わさって計画以上の販売を実現し、黒字化を実現しているのだ。
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