なぜクルマのホイールは大径化していくのか インチアップのメリットとホイールのミライ:高根英幸 「クルマのミライ」(3/5 ページ)
振り返ればこれまでの30年間、全体的にクルマのホイール径はサイズアップされる傾向にあった。そのきっかけとなったのは、低扁平率なタイヤの登場だった。なぜタイヤは低扁平化し、ホイールは大径化するのだろうか?
大径ホイールを実現する低扁平タイヤにメリットがある
もちろん低扁平化は、タイヤ自体にもメリットがある。まず一番の効果はタイヤの剛性を高められることだ。サイドウォールを薄くすることで、同じ構造でも剛性は高まる。これによって高速走行時の安定性とタイヤの信頼性を向上させることができるのだ。
しかし低扁平にしてサイドウォールを強化すると別の問題も発生する、トレッド面は相対的に平たい形状になるため、高速性能を高めるためには遠心力や路面からの衝撃を受け止めながら、均一に接地させる必要が出てくる。そのためトレッド面の剛性も高いレベルが要求され、タイヤの内部にはスチールベルトやベルトカバーなどの補強材が組み込まれ、真円性を高めると共に高剛性を実現させている。
そして低扁平化によりタイヤの剛性が高まると接地面は横長になる、つまり前後方向に短くなるので、接地面積を確保するために横幅が増やされる。クルマのカスタムやドレスアップにおいてホイールのインチアップでタイヤ幅も増えるのは、タイヤ外径を調整するためであるが、自動車メーカーは高性能化のためにホイールを大径化しているから、当然タイヤのグリップ力も増大させるためにワイドなサイズにつながっていく。
ホイールはタイヤを組み付ける部品であり、走りの性能や乗り味はサスペンションとタイヤで決まると思っている人は多いだろう。しかしホイールも走りには意外なほど影響を与える。ホイールの重量がサスペンションの動きに影響を与えるのは当然として、ホイールの剛性も乗り味に影響を与えるのだ。
また大きく重いホイールとなれば、走行中はジャイロ効果により高速時の安定性を高めることに寄与することもある。重いホイールにはデメリットしかない、と思われている人も多いようだが、実はそうでもないのだ。
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