すぐにクビ? 休暇が充実? 日立も本格導入の「ジョブ型」 よくある誤解を「採用」「異動」「解雇」で整理する:富士通、NTTも導入(2/3 ページ)
何かと話題に上がるジョブ型雇用。過日、日立製作所が本格導入をぶち上げニュースとなった。さまざまなイメージが語られ、「すぐクビになる」といった悪評や、一方で「過重労働から解放される」「ワークライフバランスが充実する」といった声も聞く。いまいち実態のつかめないジョブ型を、よくある誤解とともに解説していく。
ジョブ型において、人員採用は基本的に欠員募集であり、職務内容が厳密に定められた具体的なポストに対して、求められるスキルや経験を持った求職者が応募する。そしてその採用権限は人事部ではなく、各職場の管理者が持つ。
ここで要となるのが「職務記述書」(ジョブディスクリプション、JD)だ。ここには担当職務や責務、求められるスキルや資格、そして支払われる賃金までもが細かく規定されており、それが「メンバー」「リーダー」「マネジャー」と階層別に用意される。グローバル企業ともなれば、1社の中で1000種類以上のJDが規定されていることも珍しくない。職務を特定して募集をかけ、求められる資質をもった人がその仕事に応募し、雇用契約に明記された職務を遂行すべく働く形をとる。仕事に人を当てはめる形態であり、報酬は年齢や勤続年数に関係なく、個別の仕事の難度や希少性に応じて決まるので、ジョブ型雇用と呼ばれる。
一方、メンバーシップ型における雇用は、いわば「白紙契約」のようなものだといえる。特にわが国の新卒採用において顕著だが、入社時点の職務は厳密に特定せずに人員を募集し、人柄や潜在能力を判断して選考を行い、まずはその企業の一員として迎えるかどうかを決める。
その上で、入社後に適性を見極めて配属部署を決めたり、仕事の様子を見て異動させたりする「人に仕事を当てはめる」方式なのだ。主に重視されるのは職務遂行に必要なスキルや資格よりも、「前向きな意欲」「主体性」「周囲の人とうまくやっていける力」といった人柄に属する部分であり、「〇〇株式会社という共同体の一員(メンバー)となること」が雇用の本質であるが故に、メンバーシップ型と呼ばれるわけだ。
ジョブ型とメンバーシップ型、「異動」の違い
ジョブ型では、何年勤めようが、自動的に上位職に昇進することはなく、基本的には同レベルの現場実務を続けていく。管理職など別の職域に挑戦したり給与アップを実現したりしたい場合は、そういったポジションの欠員を待つか積極的に探し出し、自ら応募して勝ち取らなくてはいけないのだ。自らアクションを起こさない限り、いわば「決まった仕事をやり続けるヒラ社員」状態のままであるため、自分の範囲の仕事だけを終わらせて帰るし、脱落や劣後といった心配もないため、休暇取得にも抵抗なく、どんどん休む。当然非合理的な長時間労働をする理由もないため、ワークライフバランスが充実する、という構図になる。
企業の経営幹部となり、バリバリのハードワークで高給を得る「エリートコース」と、現場実務を粛々とこなす「ノンエリートコース」に入口段階で厳然と分かれており、自らの意思で選択しない限り、そのキャリアコースが交わることはないのだ。一方でメンバーシップ型の世界では、企業が働き手を家族のごとく守る代わりに、働き手は“ファミリー”の一員として、企業の要望に無制限に応える働き方を期待されることになる。
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