東京に2つの地下鉄「東京メトロ」と「都営」が存在する理由:何のため?(3/4 ページ)
東京の2大地下鉄「東京メトロ」「都営地下鉄」はどのようにして誕生したのか。現在のビジネス状況とともに誕生の経緯を探ってみる。
地下鉄の補佐役としての都営バス
東京都心でも、いまいち鉄道網が不便なところがある。ある場所からある場所に行くために、乗り継ぎを何回もしなくてはならない。
そうした場所のほとんどで、都営バスの路線が存在する。渋谷から新橋には2路線、大塚から錦糸町への路線などには「都市新バス」システムがあり、湾岸エリアのタワーマンションが林立するエリアへ向かう路線なども多くの利用者がいる。これらのエリアは、鉄道では遠回りだったり、鉄道が不便な地域だったりする。
地下鉄だけでは足りないところに、東京都交通局はバスを走らせている。一方、バス路線が混雑しすぎる、ということで新交通システムを走らせることにしたのが、日暮里・舎人ライナーだ。この区間のバスは本数が多く、かつ道路は渋滞に悩まされていたため、新交通システムを整備した。
東京メトロと都営地下鉄の「協力」
バスと鉄道、となると運賃体系が異なるのはしょうがないと思うものの、東京メトロと都営地下鉄は運賃が共通ではない、乗り継ぐと高いということは、よく言われるものである。
東京メトロと都営地下鉄を乗り継ぐと、大人は70円割引になるシステムだ。これでも「高い」とは言われるものの、それぞれに初乗り運賃を取られるシステムよりは、ましである。
また、最近は東京メトロと都営地下鉄相互の行き来がしやすくなってきた。象徴的なのは、九段下駅である。
従来、東京メトロ半蔵門線ホームと都営地下鉄新宿線のホームの間には、壁があった。乗り換えにも改札を通る必要があったのだ。13年3月に取り払われ、その後20年3月には改札も移転。東西線も含めて改札を供用することになった。
地下鉄のフリーパスなども、東京メトロ・都営交通で共通のものを発売している。2つの運営主体がありながらも、できる範囲でそれぞれを補完し、協力しあっているのである。
都営地下鉄の運賃は「東京メトロより若干高い」と不満を抱いている人が多いかもしれない。しかし、交通網自体は複数の鉄道やバスなどが協力モードにあり、全体的には使いやすくなっている。
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