「お金を稼ぐために健康を犠牲にする」愚かさ 毎日イキイキと働くためにしたい“たった一つのこと”:大愚和尚のビジネス説法(3/4 ページ)
誰もがみな、豊かに暮らしたいと願っています。だから懸命に働いて、豊かに暮らすためのお金を得ようとします。ところが皮肉なことに、身を粉にして働いて稼ぎ、ようやくゆったりとした暮らしを楽しもうと思った矢先に大病を患います――健康に、そして幸せに働き、生きるために必要なこととは?
それは、壊れたからといって「パーツ交換をしたり、買い替えたりすることはできない」ということです。また、その耐久性にも強度にも、機械以上に個体差があって、憧れの人が無理しているからといって自分にも同じような無理が効くかというと、そうではなかったりします。
真面目で頑張り屋な人ほど健康を犠牲にしてでも働こうとしますが、志なかばで病に倒れ、最悪の事態にでもなってしまったら、そもそも何のために働いたのかすら分からなくなってしまいます。
「幸せとは何か」「幸せに生きるためには何が必要なのか」
会社も個人も、どこかでそんな人生の根本をあらためて問い直す必要があります。そのためのヒントが、仏教にありました。『大荘厳経論』というお経の中に、「人間が幸せに生きるための、4つの秘訣」が説かれています。
(1)健康第一の利:健康であること
(2)知足第一の富:欲望を追うのではなく、足るを知って生活を安定させること
(3)善友第一の親:善き友と善き関係を築いていくこと
(4)涅槃(ねはん)第一の楽:人様のお役に立ちながら、生きていくこと
これら4つの秘訣のうち、トップに掲げられているのが「健康第一の利」です。
できないからこそ行動し、習慣にする
では、私たちが健康に過ごすためには、どうすればいいでしょうか。まず欠かせないのが「運動、食事、睡眠」の3つです。
運動は、動物である人間の健康にとって欠かせない要素であり、ストレス発散、うつ病改善など、心の健康にも効果があります。食事は、栄養バランスよく、食べすぎないこと。そして、スマホを見ながら、新聞を読みながらなど「ながら」食べではなく、料理を味わう、食べることそのものを楽しむ、といったことも大切です。睡眠は、身体疲労の回復、ケガや病気の回復に欠かせないだけでなく、脳疲労の回復、記憶の整理をしてくれるなど、仕事でパフォーマンスを発揮するためには欠かせない要素でもあります。
3大健康要素として知られるこれらは、今さらここで私が言うまでもないことかもしれません。「そんなの知っているよ」と感じた人も少なくないのではないでしょうか。けれども、「知っていること」と「できていること」とは違います。
「知っているけれどもできていない」人が多い。「分かっちゃいるけど、できない」人が多い。かつての私も、そうでした。しかし、病気が「それではいけない」ことを教えてくれたのです。「稼ぐため」の生活をしていた私が、救急車で運ばれたあとに立ち戻った生き方は、「運動、食事、睡眠を整える」ことでした。
「自由と幸福」を求め、寺を飛び出した私が「真の自由と幸福」に気付いて立ち戻った場所は、禅寺でした。「運動、食事、睡眠」という「生きる基本」を大切にする禅寺での生活は、私たちに「真の自由と幸福」を教えてくれます。
朝、日の出とともに起きる。食べるときには、ちゃんと食べる。仕事をするときはちゃんと仕事をする。寝るときには、ちゃんと寝る。禅寺には「知っていても、できない」ことが「知らなくても、自然とできるようになる」環境と仕組みがあるのです。
そんな禅寺の生活に戻ってからというもの、1年間に成し遂げられる仕事の量や成果が、かつてとは比べ物にならないほど向上しました。後進に継承した事業も、私がいた頃よりずっと成長しています。決して私の能力が上がったから、ではありません。「稼ぎ」を最優先する生き方から、「心穏やかに、体健やかにある」ことを最優先する生き方を選択し、実行した結果です。
「心身ともに健康であること」「それを支える生活習慣を大切に守ること」。それだけで仕事のパフォーマンスが向上することは、私だけではなく、私の寺で修行する、かつてサラリーマンであった修行僧たちも実感しています。そんな禅寺の和尚から、「慢性疲労がなかなか抜けない」あなたにとっておきのアドバイスがあります。
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