アサヒグループHD勝木社長は、オーストラリアで「スーパードライ」の売り上げをいかにして5倍にしたのか:海外戦略でらつ腕(2/2 ページ)
オーストラリアでの赴任当時、企業買収をテコにして「スーパードライ」の売り上げを5倍に躍進させたアサヒグループHDの勝木敦志社長。日本、オーストラリア、欧州の3極を軸に海外を重視した経営戦略を展開する勝木社長に、その狙いと勝算を聞いた。
ニッカウヰスキーからの転籍組
――カーボンニュートラルに向けての取り組みが進んでいるようですが、今後の見通しは。
アサヒグループは、30年までに19年比較で、Scope1・2についての二酸化炭素の排出量を70%削減する目標を掲げています。かなり高い目標ですが、達成不可能ではありません。50年にはカーボンニュートラルを目指します。
国内では33ある工場のうち21工場の購入電力を100%再生エネルギーに切り替えており、25年には国内全ての工場での購入電力の再生可能エネルギー化を目指します。
世界では70ある工場のうち同年までに64工場で購入電力の再生エネルギー化を完了させ、なるべく早く100%にしたいと考えています。欧州では風力発電が進んでいますし、豪州では太陽光発電設備も日本と比べると設置しやすいのです。
日本の企業の中ではアサヒグループの脱炭素化は先を行っていると思います。Scope3については産業界や社会を挙げて取り組む必要があります。
――女性管理職を増やす取り組みはどうなっていますか。
特に女性活躍推進を重点テーマとして位置付け、国内外グループ8社の本社部長、執行役員、取締役、監査役など経営層での女性比率を現状の22%から30年までに40%以上とする目標を新たに設定しました。
アサヒグループの社員一人ひとりが、自分らしく自由に輝くために、「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン ステートメント」を策定し、制度や仕組みを見直すとともに、育成・風土醸成の取り組みを推進します。
この問題は女性自体の問題もありますが、無理な働き方をしないと昇進できないようでは、その会社自体に問題があるので、それを変えていかなければならないと思います。女性の取締役は社外取締役で1人います。子会社の社長では3人が女性です。
――勝木社長はニッカウヰスキーに入社し、経営統合でアサヒグループに転籍しました。この間で何に一番苦労しましたか。
ニッカウヰスキーに入社したのは実家が酒屋をしていたので、何の違和感もなくニッカに入りました。アサヒビールに転籍して最初に大変だったのが、02年に協和発酵工業と旭化成から酒類事業の譲渡を受けた時に担当になった時です。金額的には大きくはなかったですが、人の転籍が大変でした。特に日本のM&Aは人の扱いを丁寧にしなければならず、これは際限のないことだと思っています。
異文化を受け入れる土壌
――生え抜きでない勝木社長がトップに就任したことは、社員を差別しないアサヒグループの企業風土をよく表していますね。
経営統合により、ニッカからアサヒに01年4月に異動になりました。やっかい者扱いされるかと思っていたら、普通の社員扱いをされたのに驚きました。アサヒという会社は「スーパードライ」で急成長したので、タレントが足りなくなり中途採用を多くしたこともあって、異文化を受け入れる土壌があり、今で言うインクルージョンができていました。
旭化成とのM&Aを担当していた時に、「経営統合の10箇条」というのがあることを知り、社員の出身により差別してはならないと第一条に書かれていたのには感激しました。途中入社であっても嫌な思いをしたことはなく、かえって「頑張れ」と励まされることが多かったです。
――日ごろから大事にしている経営理念はありますか。
いまは変化をリードしていくことが大切だと思います。会社として資源、環境を無尽蔵で消費し尽くすのは許されなくなっています。今まで当たり前だったことが通用しなくなり、全てに変化をしなければなりません。その意味で、自分自身も変わらなければならないと自覚しています。
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