「転職は裏切り」と考えるザンネンな企業が、知るべき真実:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/4 ページ)
「お前はどこに行っても通用しない」「転職は裏切りだ」──会社を去ろうとする若手社員に、そんな言葉を投げかける企業がいまだに存在する。そうした時代遅れな企業が知らない「新入社員の3割が辞めてしまう理由」や、「成長企業できる企業の退職者との向き合い方」とは?
例えば、第一生命やトヨタ自動車などで「人材育成」を目的とした他社出向が行われています。
トヨタでは生産現場で係長級の「工長」に昇格する候補者を、異業種を含めた関連会社や自動車販売店などに武者修行として出向させています。これまでの経験が通用しない外部環境に身を置くことで、リーダーとしての資質を磨くことが目的です。また、事務部門の若手幹部候補をベンチャー企業に出向させる取り組みも制度化しています。
また、コロナ禍で経営が厳しくなったANAホールディングスは、会社の生き残りをかけて、400人以上の社員をグループ外の企業に出向させています。ANAがこの方針を発表した際、「左遷じゃん」と批判する人たちがいましたが、私は「他社出向」は、アフターコロナでの企業の成長と個人の成長への布石になるだけではなく、「新しい職務保障・雇用の流動化」になると期待しています。
コロナ禍で世界は「私」が考える以上に変化しています。
最後は「人」というように、「人」の可能性にかけられるか否かで、会社の成長も存続も決まる時代にすでに突入しているのです。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)がある。
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