「魔法の虫めがね」で何が見えてきたのか “ヒヨコ”が出てきて消えた理由:週末に「へえ」な話(2/5 ページ)
大日本印刷が「魔法の虫めがね」なるモノを開発した。クラウドファンディングで販売したところ、目標金額を大幅に上回ることに。それにしても、このデバイスはどのような特徴があるのだろうか。
「ヒヨコ」が出てくる
そもそもどういった経緯で、「魔法の虫めがね」を開発することになったのだろうか。きっかけは、2020年2〜8月にかけて開かれたハッカソン(技術開発コンテスト)である。その場にエンジニアが集まって、さまざまな意見が飛び交った。「家にある本をレコードプレイヤーのように聞くことができないか」といったアイデアが出たものの、コストのことなどを考えると、メンバーから「実現するのは難しいなあ」といった声が出てきた。
話がなかなか進まないなかで、あるメンバーが「子どもの本に虫めがねが付いていて、息子がそれを使って大人の本を読んでいるんですよ」といったコメントがあった。その意見をヒントに「何かをのぞいて、それを朗読してくれるデバイスがあれば、面白いかもしれない」といった話で盛り上がり、開発を進めることに。
プロトタイプをつくったところ、周囲からは「いいね」の声があった。実際、子どもに使ってもらったところ、棒が太くて握りにくかったり、ボタンを押しづらかったり、さまざまな課題が出てきた。このほかにも「こうしたほうがいいのでは」「ここはダメだな。前のほうがいいよ」などの指摘が出てきて、そのたびにどんどん改善していった。
20年12月、埼玉県の三郷市で開かれた絵本イベントに「魔法の虫めがね」の試作品を持ち込んで、子どもに使ってもらった。そのとき、開発に携わったメンバーは、3つ不安を感じていた。(1)子どもたちは楽しんでくれるのか(2)デバイスはきちんと動いてくれるのか(3)親は子どもに使ってもらいたいと思うのか、である。
で、結果はどうだったのだろうか。「魔法のめがね」を手にした子どもちたは、絵本だけでなく、周囲にあるモノもどんどんのぞいていったのだ。心配していた(1)の「子どもたちは楽しんでくれるのか」はクリアした。(2)の「デバイスはきちんと動いてくれるのか」はどうだったのか。大きな不具合はなかったものの、「ヒヨコ」と「カスミソウ」が何度も表示される事態に。
ヒヨコやカスミソウをのぞいているわけでもないのに、なぜか表示される。原因を探っていくと、子どもたちはボタンを押すときに、予想より強く押していることが分かってきた。そのとき手ブレが生じるので、AIは対象物を毛羽だったモノとして認識し、「ヒヨコ」や「カスミソウ」を表示していたのだ。その後、この部分は改善して、いまはヒヨコが「ピヨピヨ」と鳴くことはなくなったという。
関連記事
- 『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』――最も高い家に住んでいるのは? 査定してみた
国民的アニメの主人公は、どんな家に住んでいるのでしょうか? 『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』の自宅を査定したところ……。 - CDが苦戦しているのに、なぜ曲を取り込む「ラクレコ」は売れているのか
CD市場が苦戦している。売り上げが減少しているわけだが、CDをスマホに取り込むアイテムが登場し、人気を集めている。商品名は「ラクレコ」(バッファロー)。なぜ売れているのか調べたところ、3つの要因があって……。 - トイレの個室に「使用時間」を表示 で、どうなったのか?
首都圏のオフィスで、ある「実証実験」が行われた。トイレの個室に「他の個室の使用状況」と「滞在時間」を表示したところ、どういった効果があったのだろうか。システム開発を手掛けているバカン社の河野社長に話を聞いたところ……。 - “売れない魚”の寿司が、なぜ20年も売れ続けているのか
魚のサイズが小さかったり、見た目が悪かったり――。さまざまな理由で市場に出荷されない「未利用魚」を積極的に仕入れ、宅配寿司のネタにしているところがある。しかも、20年も売れ続けていて……。 - マンションに自転車店が駆けつけて、1日26万円も売れている理由
都市部のオフィスにキッチンカーが戻ってきた。カレーやハンバーなどを購入するためにビジネスパーソンが並んでいるわけだが、気になる店を見つけた。自転車の修理・点検である。移動営業をしてもうかっているのかどうか、気になったので担当者に話を聞いたところ……。 - 「関西シウマイ弁当」を手にするために行列! 担当者に開発秘話を聞いた
崎陽軒の「シウマイ弁当」を食べことがある人も多いのでは。日本で最も売れている駅弁だが、これとよく似た弁当が登場した。その名は「関西シウマイ弁当」。JR姫路駅で販売したところ、行列ができるほどの人気ぶり。駅弁を製造している「まねき食品」の担当者に、開発の裏話を聞いたところ……。 - 発売前に現行モデルの5倍! パナの電動工具が売れに売れている理由
パナソニック ライフソリューションズ社の電動工具が売れている。新ブランド「エグゼナ」を立ち上げて、フラッグシップモデル「Pシリーズ」を発売したところ、販売目標を大きく上回る結果に。売れている理由を取材したところ……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.