これは立派な社会問題だ――「働かないおじさん問題」と正しく向き合うべき理由:「働かないおじさん問題」のニュータイプ化(3/3 ページ)
「働かないおじさん」という言葉を目にする機会が増えた。一方で、実際にミドルシニアの問題に悩む企業の話を聞くと、「本人が意図的にサボっている」というサボリーマン的な内容はごくわずかだ。「働かないおじさん問題」はどこから生じているのか、その本質について考察する。
本人側から見た問題
実際のコンサルティング現場では、よほど特殊な事例を除いて、本人が好き好んで「働かないおじさん」と呼ばれる状態になっているケースはありません。気付かない間に、またはうすうす気が付きながらうまく対応できず、周囲や上司の期待とギャップが生じている場合がほとんどです。
その状態が続くと、本人には2つの問題が発生します。
1つは「キャリア」の問題。
「LIFE SHIFT」(東洋経済新報社)がベストセラーになって以来、人生100年を見据えた働き方が注目されています。また、高年齢者雇用安定法が改正され、70歳までの就業が期待されています。
40代や50代で周囲の期待に応えられない状態となり、それを放置してしまうと、長く続く職業人生を望ましい形でコントロールすることは困難になります。
もう1つは「ライフ」の問題。
VUCAと呼ばれる複雑で厳しい環境に曝されている現在、会社の期待に応えられない社員が従来通りの処遇や雇用を確保し続けることは難しくなっています。
期待とギャップが生じている状態が続くと、厳しい処遇を受ける可能性は以前より高くなっています。場合によっては降格や降級、早期退職・希望退職への応募を勧奨されることもあり得ます。
処遇の低下、雇用契約の終了など、「予期せぬ変化」や「望まない変化」が遠い対岸の火事ではなくなりつつあるという現実を、本人もしっかり理解しておく必要があります。
日本社会から見た問題
「働かないおじさん」問題は、日本社会としても看過できない問題だと考えています。
日本では生産年齢人口(15歳〜64歳)が減少傾向で、総務省の統計では1995年の8716万人から2020年10月は7471万人と、1300万人近く減少しています。
その中核を占める40代・50代のミドルシニアも含めた日本人全体が、より長く生き生きと活躍できる環境の構築が社会的にも必要です。
「働かないおじさん」問題は本人や雇用している会社の問題、と短絡的に割り切るのではなく、本人・会社・社会が抱える複雑な問題として認識した上で、最適解を模索し相互に努力し続けることが、より良い持続可能な日本社会を実現することにつながると考えています。
具体的な問題解決のアプローチは、次回以降に解説していきます。
著者:難波猛(なんば・たけし)
マンパワーグループ株式会社 ライトマネジメント事業部 シニアコンサルタント
1974年生まれ。早稲田大学卒業、出版社、求人広告代理店を経て2007年より現職。
提案営業、研修講師、コンサルタントとして日系・外資系企業を問わず2000名以上のキャリア開発施策、人員施策プロジェクトにおけるコンサルティング・管理者トレーニング・キャリア研修等を100社以上担当。セミナー講師、官公庁事業におけるプロジェクト責任者も歴任。プロティアン・キャリア協会認定アンバサダー。
著書に、『「働かないおじさん問題」のトリセツ』『雇用調整の考え方と進め方』『ネガティブフィードバック』『「働かないおじさん」は、なぜ「働けない」のか?』がある。
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