宇野昌磨選手と“りくりゅう”ペアの足元支えた国産ブレード 創業95年の老舗メーカーが挑んだ初五輪:開発着手から9年、メダル獲得に貢献(3/4 ページ)
メダルラッシュとなったフィギュアスケートで、宇野選手と“りくりゅう”ペアが着用したスケート靴のブレードは、愛知県内のメーカーが手掛けた国産品。従来の海外製ブレードよりも耐久性が強く、選手からは高い評価を得ている。開発の経緯などを聞いた。
小塚さんの口コミで評判に トップ選手からの問い合わせ相次ぐ
小塚さんの引退で、同社のブレード製造も終了するかに思えた。だが、その後もトップ選手からの問い合わせが絶えなかった。小塚さん経由で、同社製ブレードの評判がトップ選手に口コミで広がっていたのだ。無良崇人さんも小塚さんの影響を受けた選手の一人。15年から同社製品を使用し、代表候補の一人だったが、平昌五輪の代表権を獲得することはできなかった。
トップ選手が相次いで使用したことから、同社は18年、「小塚ブレード」を一般向けに発売。スケート業界に本格参入した。引退した小塚さんはその後、フィギュア界への貢献の一環として自身の会社を設立。現在、同社製品の販売代理店を経営している。
強化選手のシェア8割に
そこに相談してきた選手の一人が、北京五輪で銅メダルを獲得した宇野昌磨選手だ。演技改善のため、20年12月から着用し、北京五輪でも使用した。宇野選手以外にも、りくりゅうペアも含め、現在では強化選手で8割のシェアを誇る。同社製ブレードはトップ選手御用達の製品となったが、ここまでシェアを広げるのも「非常に大変だった」という。
石川マネジャーによると「スケート界では指導者の意向が非常に強く、若い選手は指導を受けるコーチが用具を指定するケースもある。保護者など周囲の人の影響力も大きい」という。他方で「小塚さんや宇野さんなどトップ選手は、パフォーマンス向上のために、用具選びに自ら熱心に取り組む中で、うちのユーザーになったんだと思う。こういう選手はまだ少数派かもしれない」と分析する。
乗り越えるべきハードルは指導者の意向だけではない。五輪でのメダル獲得経験がある、別のトップ選手への提供を試みたこともあったが、マネジメント会社との契約面などが障壁となり、提供には至らなかったこともあるという。
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