クラファンでバカ売れ! 売れるほど赤字だったライト一体型プロジェクター「popIn Aladdin」誕生秘話:家電メーカー進化論(6/9 ページ)
設置性の高さや使い勝手が話題となったシーリングライト一体型プロジェクター「popIn Aladdin」。20年には「popIn Aladdin 2」、21年には据え置き型「Aladdin Vase」を発売。プロジェクター開発の経緯とその先にある野望を、popInの程濤社長に聞いた。
爆発的に注目を集めたが、初代モデルは見込み違いで大赤字
プロトタイプの開発、そしてクラウドファンディングの成功を経て、量産がスタートする。とはいえ、数千台以上の量産となるとプロトタイプとは作り方は全く異なる。
そのうえ程氏は、初代モデルを日本で生産したいと考えていた。ちょうどそのタイミングで友人の結婚式があり、そこでばったり会ったソニー勤務の同級生にバイオ社を紹介してもらった。
「そこでバイオさんに量産を依頼したのですが、当初はプロジェクターの製造経験がないなどの理由で断られました。しかし、どうしても製造をお願いしたかったので、3、4回と足を運びました。最終的にプロジェクターとシーリングライトを別々に用意し、バイオさんには組み立てと全体のアドバイスをお願いできることになりました」(程氏)
プロジェクターとシーリングライト部分は、バイドゥのネットワークを使い、多くのメーカーの中で、それぞれ実績のあるメーカーから調達できた。それをバイオのEMS部門で組み立て、18年10月、シーリングライト一体型プロジェクター「popIn Aladdin」の発売がスタートする。
popIn Aladdinは、makuakeでのプロジェクト分である約2000台を含め、合計4万2000台を販売した。しかし、初めてのハードウェア製品の販売は大成功かと思いきやそうはいかなかった。
最も大きかったのが、製造コストが当初の見込みと大きく異なってしまったことだ。makuakeのプロジェクトでは一般販売予定価格を4万9800円に設定し、そこから1台なら1万円引き、2台セットなら2万円引きの早期割引プランを設定した。
「クラウドファンディングの段階ではまだ正式に工場と話していなかったので、製造原価3割と考えて値段を設定しました。ところがフタを開けてみると初代モデルの製造原価は6万円近くになり、makuakeでの販売分は1台につき2、3万円のマイナスになってしまったのです」(程氏)
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