「働かないおじさん」を生む、3つのズレと解決方法:「働かないおじさん問題」のニュータイプ化(3/4 ページ)
なんだか意欲が低い、頑張っているけど方向性が違う――そんな問題を抱える「働かないおじさん」に悩む企業が増えている。問題点はどこにあるのか? どこに注目すれば解決できるのか?
MUSTのズレ
年齢も勤続年数も高いミドルシニア社員の場合、CAN(能力)以上にMUST(期待役割)がズレているケースが多数見られます。
MUSTがズレると、どんなに本人が頑張っても、価値ある成果を出すことはできません。本人は頑張っているつもりなので、会社や上司から評価されないと被害者意識や不満足感を持ちやすくなります。
経験や能力もあるはずなのに成果が出ない、やる気はあるが空回りする人の場合、本人側、会社側の双方に原因がある場合があります。
本人側の原因
期待の誤解を起こしている場合。具体的には、理解や情報が不足していたり、経営方針や事業戦略などの情報が古かったり、上司との確認不足があったりなどが挙げられます。
自分の都合よく期待を解釈していることもあれば、自分の立場や雇用を守りたいという気持ちから、周囲の期待を「誤解」でなく「曲解」している場合もあります。
会社側の原因
会社の説明不足。具体的には、戦略や方向性の変化や更新を個に落とし込んでいない、期待する働き方や成果を明示していないといった場合が当てはまります。また、全体通知のみで本人の理解を確認していないなど、確認不足が原因の場合もあります。
対策
「若手じゃないんだから、会社の期待は言わなくても理解しているはず(理解するべき)」という経営者や上司がいますが、相手が超能力者でもない限り、言わなければ伝わるはずがありません。
期待役割を伝えていなかったり、上司が言語化できていなかったりする場合、責任は本人ではなく、はっきり言って上司や人事の怠慢です。
特に中期経営計画や事業構造改革や経営体制の変更などで、会社の戦略やビジネスモデルが大きく転換する際には、一方的な通達やWebの案内だけでなく、対面で今後の期待役割を伝えた上で、どう理解したか本人の口で言語化してもらうほうがよいでしょう。
MUSTに関しては、テレワークやAI化が進んでいる現在、「動画で経営メッセージを発信」「チャットツールで資料を共有」「経営者や上司が言いっぱなし」などで終わらせてしまい、社員個人に届いていない場合が見受けられます。
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