食品ロスを減らそうとしたら宿泊客から「料理がないぞ!」 朝食ブッフェの“深刻”なジレンマ:瀧澤信秋「ホテルの深層」(2/3 ページ)
コロナ禍で変化したホテルの朝食ブッフェ。筆者がリピートしているビジネスホテルでもある変化があった。その理由とは……。
朝食自慢のホテルで起きたある変化
私には、以前からリピートしているビジネスホテルがある。そこは、朝食が魅力的なホテルで、味、種類、提供方法などに感心することが多々あった。また、スタッフのテキパキとした動きも好印象で、気持ちの良い朝食時間を過ごしていたものだ。
そのホテルもご多分に漏れずコロナ禍で宿泊者は激減。大打撃を受け一時ブッフェから定食へ変更、その後次第にブッフェへ戻っていた。ところが、以前とは少し様子が違う。
手袋やスニーズガードの設置はあるとして、味やメニューは以前と変わらない。しかし、料理の補充が全く追い付いていないのだ。1品2品ではない。料理が無くなった大皿やトレーが目立つようになり、リピートしても、そうした光景が常態化していくように……。「料理がない」とゲストがスタッフを呼び止めるシーンも何度か目にした。
コロナ禍でスタッフを減らしているホテルがあることは時々耳にしていたので、こちらのホテルも同様なのだろうかと推測もしたが、やはり真相が気になりいくつかの運営会社へ取材を申し込むことに。
その中で、ホテル名は控えるが具体的な情報を開示してくれた運営会社があった。日本各地で30店舗ほど展開するホテルチェーンだ。
コロナ禍で一定期間クローズした店舗も多く、自ら離職していった人もおり、経営的にも大変なことから「以前より人を減らしたのは事実」と打ち明けた。その上で、コロナ禍前より“フードロス”の問題を会社として大きなテーマにしてきたと話す。
「コロナ前はゲストから朝食終了間際に行ったら食べるものがなかったという指摘を避けるため、過度に盛り付けて提供していました」と担当者。
コロナ禍でのさまざまな運営環境の変化から、コスト削減とフードロス対策を兼ねて過度に盛り付けないようにしていた。また、朝食終了間際は小さいお皿に盛り付けて提供したり、喫食人数の少ない日は小鉢提供にしたりするなどして対策してきたという。筆者がみた“料理がなかった光景”はこうしたことも原因だったのだろう。
また、残った食材で弁当を作り従業員などへ販売することで、ロス削減と売り上げアップを両立させてきたという。
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