au経済圏に証券を融合 カブコムクレカ積み立て5%還元の狙い:金融ディスラプション(1/2 ページ)
カブコム証券の狙いは「au経済圏の中に証券を融合させるべく踏み出した一歩」(石月氏)だ。クレカ積み立てによる単なるポイント還元に留まらず、au回線契約者には追加の還元を行う点に、それが現れている。
「カブコム証券にKDDIが出資した意義、戦略の質問をずっともらってきた。これが期待への答えの一つだ」。クレジットカードによる投信積立を開始するauカブコム証券の石月貴史社長は、こう話した。
楽天証券に続き、SBI証券、マネックス証券が開始してきたクレカ積立だが、カブコム証券の狙いは「au経済圏の中に証券を融合させるべく踏み出した一歩」(石月氏)だ。クレカ積み立てによる単なるポイント還元に留まらず、au回線契約者には追加の還元を行う点に、それが現れている。
ポイント還元率では、グループ会社のau PAYカードを使う利点を生かした。SBI証券0.5%、楽天証券も実質0.5%に還元率を引き下げる中で、1%還元を実現する。
クレカ積み立てでは、証券会社がカード会社に決済手数料を支払い、カード会社は決済手数料を原資にポイントを還元する形を取る。決済手数料率は、グループ会社のほうが当然有利に設定できる。
還元は継続できるか
カブコム証券にとって、クレカ積み立ての事業上の利点はいくつかある。大きいのは新規顧客の獲得だ。特に、au回線契約者に追加還元を行うことで、auユーザーをさらに獲得することを狙う。既に新規口座獲得の過半数をau経済圏から得ているが、この比率の増大を目指す。
ただしクレカ積み立ての事業モデルを見ると、投信事業単体では赤字だ。証券会社から見た投資信託ビジネスは、信託報酬の一部を販売会社報酬として受け取る仕組み。ところが、昨今は低コストインデックス投信が流行しており、数年かかっても1%の還元額を取り戻せない状況になっている。楽天証券が、還元率1%から引き下げを発表したのも、これが理由だ。
「投信積立オンリーのお客さまだけだと事業上厳しいかもしれない。ただし、ここから入ってきた顧客が、ほかの証券取引もしてくれると見ている」と、auカブコム証券の石井政徳事業開発部長は話した。
そう期待する理由の1つは、ポイント投資が活発に推移していることだ。カブコム証券ではPontaポイントを使った投信購入を2020年9月に可能にした。その後、利用者数だけでなくポイントを使った投資の比率は順調に拡大し、直近では53%のユーザーがポイントを使って投資信託を購入している。
「ポイントフックなら、取引してもいいという傾向が顕著に出ている」と石井氏が言うとおり、クレカ積み立てで還元したポイントを、現金を追加して投信買付に回してくれるという期待がある。
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