連載
ドラえもんがつくった地下鉄は公共交通か? ローカル線問題を考える:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/6 ページ)
『ドラえもん』に「地下鉄を作っちゃえ」という話がある。のび太がパパのためにつくった地下鉄は公共交通と認められるか。この話をもとに、公共交通になるための過程、利用者減少から撤退への道のりを考えてみたい。
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
乗客が減っても「公共交通」か
さて、のび太の地下鉄は便利だと、近所の人々に大人気。きっぷはバカ売れ。ピストン輸送で大もうけだ。しかし、公共交通は「安全に運ぶ」使命があるから、法律で定めた安全基準を満たすよう国土交通省から指導される。車両は1両だけだから、ほかの車両と衝突する恐れはない。信号もいらないけれど、自動ブレーキ装置は必要だ。
ブレーキが壊れたら終点で壁に衝突する。それを防ぐ非常ブレーキだ。トンネルの途中に非常口も必要だ。万が一の火災に備えよう。駅が混雑してきたら、可動式ホーム柵も付けたい。お年寄りや妊婦、荷物の多い人のために、地上との出入り口にエレベーターもあったほうがいい。
公共交通として安全基準を満たし「誰もが乗れる」を実現する。費用はかさむ。このままでは利益が得られない。事業継続の意味がない。
のび太は「もうからないよ、ドラえも〜ん」と泣きつく。しかし、ここではドラえもんではなく、国や自治体が救ってくれる。なぜなら公共交通だから。補助金で安全対策費用の一部を負担しましょう。施設の不動産税を減免しましょう。こんなふうに「生かさず殺さず」程度に応援してくれる。
利用者が多いから、なくなったら地域も困る。便利に地域は栄え、不便な地域は衰退してしまう。人口の増減は税収の増減でもある。公共交通は自治体の経営にとっても欠かせない道具である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
次の「新幹線」はどこか 計画をまとめると“本命”が見えてきた?
西九州新幹線開業、北陸新幹線敦賀延伸の開業時期が近づいている。そこで今回は、新幹線基本計画路線の現在の動きをまとめてみた。新幹線の構想は各県にあるが、計画は「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」として告示されている。これと費用便益比、各地のロビー活動の現状などから、今後を占ってみたい。
なぜ「時速5キロの乗り物」をつくったのか 動かしてみて、分かってきたこと
時速5キロで走行する乗り物「iino(イイノ)」をご存じだろうか。関西電力100%子会社の「ゲキダンイイノ」が開発したところ、全国各地を「のろのろ」と動いているのだ。2月、神戸市の三宮で実証実験を行ったところ、どんなことが分かってきたのだろうか。
『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』――最も高い家に住んでいるのは? 査定してみた
国民的アニメの主人公は、どんな家に住んでいるのでしょうか? 『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』の自宅を査定したところ……。
2025年の大阪・関西万博で、鉄道の路線図はどうなるのか
2025年に大阪、夢洲で「2025年大阪・関西万博」が開催される。政府は主要公共交通機関に大阪メトロ中央線を位置付けた。このほか会場へのアクセスには船とバス、さらに具体化していない鉄道ルートが3つ、近畿日本鉄道の構想もある。また会場内の交通には、3種類のモビリティが計画されている。
新幹線だけじゃない! JR東海の「在来線」はどうなってるのか
JR東海といえば「東海道新幹線を運行する会社」「リニア中央新幹線を建設する会社」というイメージが強い。報道も新幹線絡みが多い。しかしほかのJR旅客会社と同様に在来線も運行している。そして「新幹線ばかり優遇して、在来線の取り組みは弱い」という声もある。本当だろうか。
