働き方改革の「大きな勘違い」 日本はいつまで経済大国でいられるか?(1/2 ページ)
日本の働き方改革は果たして成功しているのだろうか? モチベーションに関する理論や労働生産性の比較から、その実態を探っていく。
私たちは仕事に対して「満足」と「不満足」を覚えますが、それぞれの要因は異なります。
アメリカの心理学者のフレデリック・ハーズバーグは、仕事のモチベーションに関して「衛生要因」と「動機付け要因」からなる2要因理論を提唱しました。
人が不満を感じるとき、その人の関心は自分たちの作業環境や労働条件に向く。一方、仕事の充実を感じるとき、本人の関心は仕事そのものに向く。つまり仕事に関連する欲求には2種類あり、それぞれの要因は、人に異なった作用を及ぼす。
不満足と関連が強い作業環境や労働環境は衛生要因、満足と関連する仕事の内容ややりがいは動機付け要因とされています。
この2つの要因の相互の影響はある程度あるものの、その度合いは弱く、別個に作用する傾向が強いと考えられます。つまり衛生要因が動機付け要因として、強く働くことはありません。
その結果、不満足に関連する衛生要因を改善したとしても、仕事のやる気の源である動機付けには至らないというわけです。
この衛生要因の代表的な例が、会社の方針と管理、作業環境、給与・休日といった労働条件などです。一方、動機付け要因には、仕事に対する前向きな関心、業務遂行における達成感、自分の仕事が正当に評価されたことによる充実感などがあります。
例えば、給与を上げると一時期は満足を感じるかもしれませんが、やがてそれが当たり前となり、さらに高い賃金を求めるようになり、いつしか不満が発生するようになります。また休日も同様です。つまり賃金を上げたり休日を増やしたりしても、それは衛生要因であるために、仕事を頑張ろうという動機付けにはならないといえるわけです。
働き方改革は、成功しているのか
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