井の中の蛙「コロナ感染、菓子折りで謝罪せよ」――日本のおかしな組織文化:沢渡あまねの「脱アナログ庁」(3/3 ページ)
新型コロナウイルスによる隔離後、職場で菓子折りを配らなかったら上司や同僚から指摘を受けた――そんな内容のニュースがネット上で話題となった。なぜ、こうしたウェットな組織文化が生まれてしまうのか。350以上の企業や自治体、官公庁などでの組織や業務の改革支援を行ってきた沢渡あまね氏が、解説する。
「井の中の蛙」な組織にならないために
このような前時代的な価値観から抜け出せない職場、公私混同甚だしい理不尽な慣習が色濃い職場、改善をしようとしない職場に対して、仕事に意欲的な人ほどモチベーションを下げる。
「ワークエンゲージメント」という言葉がある。組織や仕事や仲間に対するつながりの強さ、すなわち帰属意識、愛着、誇りなどを意味する。
プロとしての成長意欲が高い人、家事や育児や介護など制約条件がある中で職場でもパフォーマンスを発揮したい人、学校に通いながら複業しながらなどほかにやりたいことがある人であればなおのこと、「本業に関係のない雑務」をすることでエンゲージメントが下がる。
「テレワークだとコミュニケーションがうまくできない(だから出社に戻す)」といった対応も、やる気のある人、正しく成長したい人のエンゲージメントを下げる。
彼/彼女たちはただ単に出勤させられるのが嫌なわけではない。IT技術を使いこなそうとしない、新しいやり方を取り入れようとしない、仕事のやり方や組織カルチャーを変えようとしない経営陣や管理職に対して「情けない」と幻滅し、「この会社大丈夫か?」と危機感を持つのである。
旧態依然の組織カルチャーで、本来正しく活躍できるはずの人を遠ざける。これはダイバーシティー&インクルージョンの観点からも大いに問題である。
日本のレガシー組織よ。そろそろオトナになろう。仕事をする場に、プライベートの雅なしぐさを持ち込みすぎる組織カルチャーからいい加減卒業しなさい。
多様化が進む時代、固定化した価値観や組織慣習は活躍できる人材や意欲的な人材を遠ざける。流動性のない組織、陰湿な組織は「ムラ社会」と化し、やがて過疎化が進む。
それは地域社会においても企業組織においても同様である。同じ組織しか知らない、プロパー人材が主流派を占める閉鎖的な企業も問題である。外を経験する「越境学習」も取り入れ、組織カルチャーとスキルの健全化を促していきたい。
井の中の蛙集団は、組織を停滞から衰退に導く。
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