井の中の蛙「コロナ感染、菓子折りで謝罪せよ」――日本のおかしな組織文化:沢渡あまねの「脱アナログ庁」(2/3 ページ)
新型コロナウイルスによる隔離後、職場で菓子折りを配らなかったら上司や同僚から指摘を受けた――そんな内容のニュースがネット上で話題となった。なぜ、こうしたウェットな組織文化が生まれてしまうのか。350以上の企業や自治体、官公庁などでの組織や業務の改革支援を行ってきた沢渡あまね氏が、解説する。
そもそも菓子折りほどのコミュニケーションは必要か
どうも日本のレガシーな組織(日本だけとは限らないかもしれないが)は、職場にウェットな人間関係を求めすぎるきらいがある。
終身雇用前提で、社員が会社組織に対して長期間(新卒で入社してから定年退職するまで)かつ長時間(残業や休日出勤も厭わず)滅私奉公する構造が長かったからであろうか。人材流動性が低い前提で組織文化が醸成されてしまったからであろうか。上司と部下はまるで一昔前の親子のように、あるいは中学や高校の体育会の部活動のような上下関係や師弟関係を持ち込みすぎる。
コミュニケーションにおいても同様である。
「テレワークだとコミュニケーションがうまくできない(だから出社に戻す)」──このような言葉を私自身、多くの職場で耳にしてきた。
もちろん仕事においてコミュニケーションが重要なのは言うまでもないが、それにしてもそこまでウェットなコミュニケーションが求められる仕事が本当にどれだけあるのだろうか? その場に居合わせることでコミュニケーションしている気になって、実際は必要なコミュニケーションができていなかったのではないか? 甚だ疑問である。
そこへ来て「休んで職場に迷惑を掛けたのだから、菓子折りを持って来て謝罪せよ」。これはもう度が過ぎている。
職場は仕事をする場である。なのにプライベートでの“雅なしぐさ”を持ち込みすぎ、公私混同しすぎである。何より、ただでさえ病み上がりで(あるいは罹患した家族のケアで)大変な本人に、菓子折りを買うために無駄に外出させ、お金をかけて配らせるなどそれこそオトナとしての配慮に欠けている。少なくとも、強制すべきものではない。
どうしても菓子折りの購入と配布を求めるのであれば、それは職場コミュニケーション活性のための業務命令であり、菓子折りを買いに行く手間や時間を業務時間とカウントした上で「社内飲食費」「福利厚生費」として経費扱いすべきである。
そんな雅なままごとをしているほどその職場は安泰で暇なのであろうか? その危機感のなさが情けない。
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