コラム
育休を取ると「昇給させない」職場 他の理由の休業なら昇給できるのに……違法ではないのか?:弁護士・佐藤みのり「レッドカードなハラスメント」(1/2 ページ)
妻の出産を機に3カ月の育休を取得した男性看護師Aさん。勤め先の規定で「3カ月以上の育休を取ると、昇給はできない」と告げられましたが、他の理由で3カ月以上働かなかったとしても昇給はできると分かりました。こうした規定は、違法ではないのでしょうか?
連載:弁護士・佐藤みのり「レッドカードなハラスメント」:
ハラスメント問題やコンプライアンス問題に詳しい弁護士・佐藤みのり先生が、ハラスメントの違法性や企業が取るべき対応について解説します。ハラスメントを「したくない上司」「させたくない人事」必読の連載です。
今回の連載のテーマは「パタニティ・ハラスメント(パタハラ)」。前編「“男のくせに育休なんて”──育児参加する男性への『パタハラ』 2022年4月の改正育児・介護休業法との関係は?」でお伝えしたように、パタハラとは主に、男性従業員が育児休業を取得したいと申し出たり、実際に取得したりした際に、上司や同僚からなされる嫌がらせのことです。
育休を取ると「昇格させない」制度
後編では、「パタハラ」が訴訟に発展してしまった事例をご紹介します(大阪高裁2014年7月18日判決)。
男性看護師Aさんは、医療法人Yが運営する病院に勤務していたところ、妻の出産を機に3カ月間の育児休業を取得しました。
法人Yの「育児介護休業規定」には、「育児休業中は『本人給』のみ昇給する」と定められており、3カ月以上の育児休業を取得した場合、定期昇給時に『職能給』(経験年数や能力に基づく等級に応じて支給される基本給)を昇給させない運用がなされていました。これは、育児休業中は就労していないため、能力が向上しないことを考慮してのことでした。
しかし、他の理由の休業は昇給OK 育休だけ冷遇は違法ではないのか?
関連記事
- 「月末に1日だけ取得すればお得」 男性育休の“抜け道”を、会社側は制限できるか
当社では男性育休を推進していますが、賞与支払のある月の月末に1〜3日間と短期間の取得が目立ちます。「月末に育児休業を取得するとお得」という情報をもとに申請しているようです。取得期間を最低1カ月以上と定めることはできますか? - 育休法改正でこう変わる! 「全社的に説明」のみはNG、人事がすべき“準備”とは?
6月3日、改正育児・介護休業法が成立した。今回の法改正の要点や、人事が今から進めておくべき準備とは? Works Human Intelligenceの阿弥毅氏に話を聞いた。 - 男性育休「渋々取得」→100%に! 社内の雰囲気が激変、サカタ製作所で何が起きたのか
サカタ製作所は急速に男性育休取得を推進し、18年には取得率100%達成、以降も100%をキープしている。当初は「我が家には必要ない」など社内の理解を得られなかった男性育休を、なぜ浸透させることができたのか? - 「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」 両者を分ける“4つのスキル”とは?
日本企業はなぜ、「部下を育てられない管理職」を生み出してしまうのか。「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」を分ける“4つのスキル”とは? 転職市場で求められる優秀な管理職の特徴について解説する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.