なぜ? MBOと連動した人事評価が「イマイチ」になる理由:連載「9割の会社が人事評価制度で失敗する理由」(1/3 ページ)
多くの企業が目標管理制度(MBO)に基づく人事評価を取り入れていますが、実際には満足のいく運用ができているという声を聞くことはあまりありません。なぜ、そのような状態に陥るのでしょうか。
今回取り上げるのは、人事評価制度を運用する上で課題になりやすい「目標管理制度」(MBO)についてです。多くの企業が目標管理制度に基づく人事評価を取り入れていますが、実際には満足のいく運用ができているという声を聞くことはあまりありません。なぜ、そのような状態に陥るのでしょうか。
連載「9割の会社が人事評価制度で失敗する理由」の最終回として、これまでの連載内容とも絡めながら、「目標管理制度と人事評価の失敗」について解説していきます。
さて、パーソル総合研究所が2021年に実施した「人事評価制度と目標管理の実態調査」によれば、目標管理制度を実施している企業の割合は53.8%となっています。そして、その大半の企業が目標管理制度と人事評価制度を連動させていると思われます。
非常に多くの企業で採用されている人事評価と目標管理制度の連動方式ですが、運用上は実にいろいろな課題が指摘されています。
労務行政研究所が21年に実施した「人事評価制度の最新実態」の中には、「人事評価の運用における課題」というアンケート項目があります。アンケートの結果によれば、「評価者によるバラつきの抑制に向けた評価能力の向上(評価者目線):82.3%」を筆頭に、「経営計画や組織の課題を目標として部下に提示する力の向上(評価者目線):50.6%」「自身の目標を具体的に設定する力の向上(被評価者目線):49.1%」など、目標管理に関する課題が上位にきています。
人事制度として導入しやすく、人事評価との相性も良いと思われている目標管理制度ですが、導入後の運用面で問題・課題が多く出やすいという特徴があります。なぜそのようになってしまうのか、具体的にどのような課題があるのか、もう少し詳しく見ていきます。
目標管理制度の運用は、端的にいえば(1)目標設定⇒(2)進捗(しんちょく)管理⇒(3)達成度評価という3つのステップに分けられます。(1)〜(3)それぞれのステップにおいてどのような課題があるのか、実際に目標管理制度を運用している企業の社員が抱えている不満の声から拾ってみましょう。
先ほど紹介したパーソル総合研究所の調査では、社員が抱えている「目標管理制度への不満」に関して、上位15項目が掲載されています。当該項目を先ほどの(1)目標設定⇒(2)進捗管理⇒(3)達成度評価という観点で再整理すると、おおむね以下のようになります。
これらの内容は、目標管理制度を用いた人事評価がうまくいかない理由をほぼ集約したものといえます。
そもそも達成度を客観的に評価できるような指標=目標が設定されにくく、また等級や部署によって目標の難易度設定がバラバラであれば公平性も確保できません。加えて、進捗管理も適切に行われず、場合によっては当初立てた目標の内容が期中で変わることもあり得る──こうした状況では、客観性・公平性が求められる人事評価において、目標管理制度を有効に活用することは難しいのではないでしょうか。
ここで一つ、企業事例を紹介します。筆者がこれまでに実際に見聞きした内容を加工したものになりますが、多くの企業で実際にこうした例は少なくありません。
上記は、同じ等級で同じ役職のX氏とY氏の目標設定シートを並べたものになります。テーマは同じく「業務改善」ではありますが、それぞれの内容は異なります。目標達成の結果は人事評価制度と連動しており、ボーナスや昇進昇格と絡むことになります。
結果から述べますと、X氏は目標を達成してその期のボーナスは前年よりアップ、逆にY氏は目標未達でボーナスは前年よりダウンとなりました。
ここまでの説明で、当該結果に違和感を覚えたでしょうか? ここはぜひとも違和感があってもらいたいところなのですが、企業研修などで同じ事例を紹介すると、すぐには受講者から指摘が上がらない(特に問題なしと判断される)こともあります。
違和感の正体は?
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