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赤字ローカル線存廃問題 「輸送密度」だけで足切りするな杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/8 ページ)

地方ローカル線は、従前からの過疎化と少子化に加えて、疫病感染対策の長期化で危機的状況にある。特に輸送密度2000人未満の線区が課題とされるが、そもそも民間企業が赤字事業から撤退できないという枠組みがおかしい。公共交通は応益主義であるべきだ。そこで存廃問題で使われる「輸送密度」について考える。

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輸送密度の計算式

 輸送密度の計算式をおさらいしてみよう。義務教育レベルの数式である。

 輸送密度=「調査期間の輸送人数(人キロ)」÷「調査区間の距離」÷「調査期間の営業日数」

 これが公式だ。調査期間は月間、年間など任意の期間を指定できる。もっとも、ローカル線問題では年間の数値で論じられるから、実態はこうだ。

 輸送密度= 「年間の輸送人数(人キロ)」÷「調査区間の距離」÷「年間の営業日数」

【年間の輸送人数(人キロ)】

 実際に乗車した人数と距離を積算した数字だ。人数ではなく輸送量を示す。「人数×乗車キロ」だから、2万人キロといった場合は2万人ではない。C駅とG駅を結ぶ路線があって、途中にD駅、E駅、F駅という駅がある。この場合、C駅〜G駅の全区間乗車した人、C駅〜D駅、C駅〜F駅、D駅〜E駅、E駅〜G駅などなど、毎日のさまざまなパターンの乗客について、すべて人数と距離を計算する。もちろん大変面倒な作業だ。

 その作業のもとになる資料は「乗車券・定期券の販売実績データ」と「IC乗車券の乗降データ」だ。国鉄時代は「回収されたきっぷ」であり、だから使用済みきっぷは原則として回収した。集計する必要があったからだ。

 国鉄時代は規則に厳しかったから、きっぷを記念にもらうなんて希少な経験だった。現在は記念にくださいといえば、使用済み証明のハンコを押して返してれる。記念用にデザインされたハンコもある。きっぷの販売時のデータを集計するようになったからだ。

 だからって使ったきっぷを無断で持ち帰っちゃダメだよ。きっぷは「乗客が乗車する権利を契約した証明書」という意味もあって、使い終わったら返却しなければいけないという規則がある。

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