後発Web会議システムの「パルケ」 業界に地殻変動を起こすか:後発サブスク企業の生き残り方(1/5 ページ)
文字起こし機能を搭載し、Web会議とチャット機能を1つにさせた後発のサブスクリプションツール「Parque(パルケ)」。翻訳機能を実装するなど、これまでになかった付加価値のある機能を付けることによって既存のWeb会議システム業界に新しい風を吹かそうとしている。今後の生き残り戦略について、連続起業家であるパルケの社長にインタビューした。
連載:後発サブスク企業の生き残り戦略
AmazonやNetflixなどのサブスクリプションサービスは消費者の生活を大きく変えた。現状は、サブスク企業の勢力図は固まりつつある。しかしそんな中でもサブスクサービスに乗り出す「後発企業」もある。すでにできあがっている構図に、いかにして分け入ろうとしているのか。その戦略に迫り、後発サブスク企業の生き残り戦略を分析する。
新型コロナウイルスの感染拡大の功罪において数少ない「功」の部分がある。それはWeb会議システムが一気に普及した点だろう。
特に対面でのコミュニケーションが中心だった日本で、Web会議システムは新しい働き方の選択肢の1つになった。MM総研が2021年10月に発表した「コラボレーションツール利用状況調査」によると「最も利用するWeb会議システム」について「Zoom」と回答したのは60.1%と過半数を占めた。
次に「Microsoft Teams」が21.4%、「Google Meets」が7.9%、「その他」が10.6%で、上位3つが市場を独占している状況だ。
「Zoom」が60.1%と過半数を占め、「Microsoft Teams」が21.4%、「Google Meets」が7.9%と続き、上位3つが市場を独占している状況だ(「コラボレーションツール利用状況調査」)
同調査では「Web会議に望む機能」については「議事録作成/文字起こし機能、字幕機能」が47.3%で最も多かった。この文字起こし機能を搭載し、Web会議とチャット機能を1つにさせた後発のサブスクリプションツールが「Parque(パルケ)」だ。
同ツールを運営するパルケ社(東京・渋谷)は20年6月に創業した。文字起こし機能のほかに翻訳機能を実装するなど、これまでになかった付加価値のある機能を付けることによって既存のWeb会議システム業界に新しい風を吹かそうとしている。既存のWeb会議システムよりも中小企業を想定ターゲットに据え、情報共有ツール、コラボレーションツールとしての側面を強く押し出す格好だ。
今後の生き残り戦略について、連続起業家であるパルケの鎌田大輔社長にインタビューした。
鎌田大輔(かまた・だいすけ)父親の仕事の関係でパナマ、スペインに住んでいたこともある帰国子女。1999年 慶應義塾大学法学部政治学科卒業し、ジェーシービー入社。主にBiz DevとしてETC、QUICPayなど担当する。2006年、金融・決済領域を中心としたプラットフォーム提供するインフキュリオンを創業。10年には同じく金融決済サービスのリンク・プロセシングを創業し、コロナ禍の2020年6月にパルケを創業
誰にでも分かりやすいUIで勝負
――パルケの創業が2020年ですから創業準備をしているときにコロナが広がった形だったと思います。Zoomの利用が広まり、先に市場を取られた気持ちにはなりませんでしたか?
起業の準備をしているときに、どんどん世の中が変わって、コラボレーションツールが出てきた感じでした。ただ、コロナがなかったら「これからはいつでも、どこでも働ける社会になります」とWeb会議の提案をしても、相手からは「どこの世界の話?」といわれていた気がするのです。
あまりにも突飛(とっぴ)なところに行き過ぎると、誰もついてこないとは思っていました。
――コロナ禍でWeb会議システムはかなり浸透したといえると思います。一方、後発の貴社のツールは主なターゲットを他社とは異なる層に想定していますね。どんな戦略を描いていますか?
ZoomやSlackなどたくさんのサービスが出てきましたが、コロナの直前に関しては、どちらかというとアーリーアダプター層が使っているツールでした。特にSlackは高機能ですが、プロダクトの学習が必要と思います。
そんな状況下でコロナが来て、働く場所の分散、コミュニケーションの変化など状況が変わりました。皆が何となく「ちょっと使うのが難しいな」「その場しのぎで使っています」と思いながらもツール自体は広まっていきました。ただ地方では、まだまだ浸透してないところもあります。
今後求められるのは、「Web会議やチャットが難しそうだな」と思っているマジョリティー層に対して、誰にでも分かりやすいUI(ユーザーインタフェース)、UX(ユーザーエクスペリエンス) を備えたツールなはずです。
人々が便利さを実感したがゆえに「もう少し分かりやすいモノがない?」という点を当社がついていきたいのです。地方ではまだまだコラボレーションツールの浸透率が低いのでマーケットの下地は広いと考えています。
関連記事
- 「希望退職を募集することになったら、私はJALを辞めます」 日本航空・菊山英樹専務
コロナ禍による国際、国内の旅客数減少が長期化して日本航空(JAL)は苦しい経営が続いている。経営破綻後に当時の稲盛和夫会長(現在は名誉顧問)から経営のやり方を巡って叱責された経験がある菊山英樹専務にインタビューした。 - 上場企業の「想定時給」ランキング、3位三井物産、2位三菱商事 8000円超えで「ぶっちぎり1位」になったのは?
上場企業の「想定時給」ランキング……。3位三井物産、2位三菱商事に続き「ぶっちぎり1位」になったのは? - 「年商1億円企業の社長」の給料はどれくらい?
「年商1億円企業」の社長はどのくらいの給料をもらっているのか? - 「この企業に勤める人と結婚したい」ランキング トヨタ自動車、任天堂をおさえての1位は?
「この企業に勤める人と結婚したいランキング調査」。1位は「地方公務員」(28.6%)だった。 - 富士通・時田隆仁社長に聞く「年収3500万円」の運用状況 みずほシステム障害への対応は?
富士通の時田隆仁社長に、今後の事業展開の方向性を聞いた。 - ヤマト運輸が舵を切るデータ・ドリブン経営 “DX請負人”の中林紀彦執行役員を直撃
ヤマト運輸が顧客サービスを改善しようと、宅配に関する膨大なデータを駆使したデータ・ドリブン経営に舵を切っている。その仕掛人であるデジタルデータ戦略担当の中林紀彦・ヤマト運輸執行役員を直撃した。 - リニアを阻む静岡県が知られたくない「田代ダム」の不都合な真実
静岡県が大井川の減水問題などを理由に、リニア中央新幹線の建設工事に「待った」をかけ続ける一方で、「黙して語らない」大量の水がある。静岡県の地元マスコミも触れられない「田代ダム」の不都合な真実を追った――。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.