ウクライナ侵攻の裏で何が? イーロン・マスクの“技術”が生命線に:世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)
ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、民間企業のある製品が一役買っている。今後の戦況にも大きな影響を与えるといわれるその技術とは……。
副首相も提供を呼びかけた「スターリンク」の可能性
スターリンクを立ち上げたのは、世界的な起業家であるイーロン・マスク氏だ。テスラの創業者で、宇宙開発を行うスペースXの創業者でもあるマスク氏は、スペースXの事業の一部としてスターリンクを2015年にスタートさせた。
スターリンクは2000個以上の衛星をすでに運用しており、今後も小規模な衛星を多数打ち上げる予定でいる。
ウクライナでは、コメディアンだったゼレンスキー大統領が19年に大統領選で勝利した時に、SNS戦略の後ろ盾になっていたミハイロ・フョードロフ副首相兼デジタル転換相が、ロシアによるウクライナ侵略を受けて、SNSで反ロシア活動を開始。世界の大手企業の関係者などにSNSで直接メッセージを送るなどして、ウクライナへの支援を得ようとした。
その対象の1人が、マスク氏だった。フョードロフ副首相はツイッターで「私たちはスターリンクのシステムをウクライナに提供してほしいとお願いする」というメッセージを2月26日に送った。24日のウクライナ侵攻の2日後のことである。
ロシアは今回の侵略行為で、早い段階でウクライナの通信やコミュニケーションのシステムを破壊しようと狙っていた。その作戦はあまりうまくいっていないと報告されているが、少なくとも、ウクライナ国内のインターネットやコミュニケーションが遮断されることは、ウクライナ側もできれば避けたい。政府や軍の指揮系統を混乱させ、国民を不安に陥れることになるからだ。
ゼレンスキー大統領と側近らが使う通信は、欧米がロシアから察知されない安全な通信ネットワークを提供していると見られており、通信が滞ることは考えにくいが、それでは限られた人のみが守られていることになる。そこで重要になるのが、このスターリンクだ。
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