ウクライナ侵攻の裏で何が? イーロン・マスクの“技術”が生命線に:世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)
ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、民間企業のある製品が一役買っている。今後の戦況にも大きな影響を与えるといわれるその技術とは……。
中国の動きは
世界に目を向けると、中国は今、巨大経済圏構想「一帯一路」や「デジタルシルクロード」で、「中国製造2025」や「中国標準2035」(中国の規格を世界に広める政策)の政策にからめて、中国製通信機器の設置拡大を狙ってきた。それによって、中国を中心にしたデータ主導権の獲得を狙っている。
それには光ファイバーケーブルの設置計画なども含まれるのだが、スターリンクのような衛星のインターネット通信がどんどん広がれば、中国に依存しなくてもいい国や地域が出てくるだろう。そうすれば、中国の思惑通りに事が進まなくなることも考えられる。
米国がそれを考慮していないはずはない。
今回のウクライナ侵攻では、スターリンク以外にもいくつかのテクノロジーが活用されている。例えば、米エアビーアンドビーなどの民泊仲介サービスは、そのプラットフォームでウクライナを逃れた難民たちに無料で滞在先を提供している。
ウクライナ政府は、「ロシア兵を倒す」ためにビットコインなど暗号通貨を使った寄付を求めている。ロシア国内の反体制派を援助するためにそうしたデジタル通貨などが使われている。
ウクライナ侵攻の裏では、こうしたさまざまなテクノロジーを使った試みが実施されているのである。紛争時にも力を発揮するテクノロジーの可能性についても、引き続き注目しておきたい。
筆者プロフィール:
山田敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
関連記事
- クラファンで3億6000万円を集めた製品は、なぜ謝罪に追い込まれたのか
クラウドファンディングサイト「マクアケ」に掲載され、3億6000万円近い資金を集め、反響を呼んだ超音波食洗機「ザ・ウォッシャー・プロ」。その一方で、「優良誤認ではないか」と疑問視する声が上がり、その反応もまた大きくなっていった。同プロジェクトは何が問題だったのか。 - 業界トップの「イセ食品」に衝撃! なぜ卵のように転がり落ちたのか
「森のたまご」などで知られるイセ食品が、債権者から会社更生法を申し立てられた。鶏卵業界のトップがなぜ追い詰められたのか。背景に“つくりすぎ問題”があって……。 - イオンの「最低賃金以下」問題から見える、“安いニッポン”の無限ループ
イオン九州が、パート従業員を最低賃金よりも低い時給で募集していることが明らかになった。とはいっても、これは単純なミス。システムの更新がきちんとできていなかったので、過去の“安い時給”が表示されていたわけだが、筆者の窪田氏は「見過ごせない出来事」だと指摘している。どういうことかというと……。 - なぜ「時速5キロの乗り物」をつくったのか 動かしてみて、分かってきたこと
時速5キロで走行する乗り物「iino(イイノ)」をご存じだろうか。関西電力100%子会社の「ゲキダンイイノ」が開発したところ、全国各地を「のろのろ」と動いているのだ。2月、神戸市の三宮で実証実験を行ったところ、どんなことが分かってきたのだろうか。 - 次の「新幹線」はどこか 計画をまとめると“本命”が見えてきた?
西九州新幹線開業、北陸新幹線敦賀延伸の開業時期が近づいている。そこで今回は、新幹線基本計画路線の現在の動きをまとめてみた。新幹線の構想は各県にあるが、計画は「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」として告示されている。これと費用便益比、各地のロビー活動の現状などから、今後を占ってみたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.