アイスの棚が「稼げる広告」に変身! 小売店の新しい可能性:石角友愛とめぐる、米国リテール最前線(1/4 ページ)
小売店舗には「消費者との接点を持っている」という強みがあります。これまで、オフラインの小売店はオンラインの小売店に比べて広告では稼げないとされてきましたが、状況は変わってきているようで――。
2000人以上の米国人を対象に行った調査で、コロナ禍でも80%以上の人がオンラインではなく店舗での食料品購入を好んでいることが分かりました。また、食品カテゴリー別に見ると、冷凍やチルドの棚に並ぶ商品の需要がコロナで急増し、20%以上も増えています。
小売店舗の強みは、消費者との接点を持っていることです。その強みを生かし、店舗内でさまざまな消費者マーケティングを実施し、デジタルサイネージなどを導入して広告ビジネスを構築しようという動きがあります。
古典的なものでいえば、店舗の入り口に置かれた「本日のお買い得商品」を記載したフライヤー広告や、店舗内に設置された小さいデジタルスクリーン上に表示されるお買い得商品の案内などもその一種です。
また、以前この連載で紹介した日本のスーパーマーケットチェーンであるトライアルのデジタルサイネージ付きカートの導入なども、その一例といえます。
オンラインとオフライン、同じ小売りでも異なる「広告の在り方」
このように、小売店舗は消費者との接点を持つという強力なポジショニングを確立しています。その一方で、広告主を集め自動的に配信するという広告配信プラットフォーム(リテールメディアプラットフォーム)を独自に持つような技術投資までは行っていないところがほとんどです。
通常、小売店が消費者向けのプロモーションを作るときは、メーカーと共同でプランニングを行い、店内で実装するという形をとっています。例えば、「来月から2週間はメーカーA社の商品Xを1割引きにするキャンペーンを行う」などです。
小売店にとって期待される経済的効果といえば、客単価の向上が主であり、広告収入という観点からは大きなインパクトにはなりません。つまり、オンラインショッピングで広く普及しているアマゾンやグーグルなどのメディアプラットフォームにおける広告ビジネスと、実店舗での広告ビジネスは、似て非なるものなのです。
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