アイスの棚が「稼げる広告」に変身! 小売店の新しい可能性:石角友愛とめぐる、米国リテール最前線(2/4 ページ)
小売店舗には「消費者との接点を持っている」という強みがあります。これまで、オフラインの小売店はオンラインの小売店に比べて広告では稼げないとされてきましたが、状況は変わってきているようで――。
実際、オンライン上の小売店では広告ビジネスが大きな収益源になっています。アマゾンの広告ビジネスの売上推移を見ると、収益は右肩上がりで、2020年の第4四半期には前年比66%増の79億5000万ドル(およそ9500億円)に達したといいます。
また、アマゾン上で商品を出品している売り主の動向を見ると、75%の売り主が少なくとも1種類のクリック報酬型(pay-per-click:PPC)広告を利用していることに加え、21年の広告への投資額は増加しています。そして、34%の売り主は、これからさらに大きな額を広告費として費やす予定であることが分かっています。
スーパーマーケットなどの実店舗における小売りビジネスは利益率が低く、約2%といわれています。その反面、広告配信は一般的に非常に高利益なビジネスとされており、成長市場であることから、実店舗が広告ビジネスに参入する経済的な理由が大きいことが分かります。
店舗にも「稼げる広告」が
そこで今、注目されているのが、「商品棚の扉」という大きな面積を利用したデジタル広告配信です。
シカゴに拠点を持つクーラー・スクリーンというリテールAIの会社が提供する技術は、モーションセンサーとカメラのシステムを使って、ドアの内側にある商品の情報や価格、お買い得品、そしてブランドにとって最も訴求効果の高い有料広告を表示するというものです。同社はマイクロソフトベンチャーズなどから8000万ドル(およそ95億円)以上もの資金調達をしている、注目リテールAIスタートアップです。
この技術によって、店舗には新たな収入源を、消費者には新しいショッピング体験を提供します。同社のWebサイトによると、現在約1万台のスクリーンがさまざまな小売店舗に導入されており、月間およそ9000万人の消費者に広告が視聴されているといいます。
冷凍棚や冷蔵棚の大きな扉を利用して、メーカーの商品を扉全体に表示させるなど、感情訴求型の広告を表示できます。例えば、アイスクリームが陳列されている冷凍棚では、外気温に合わせたプロモーションもできます。
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