アイスの棚が「稼げる広告」に変身! 小売店の新しい可能性:石角友愛とめぐる、米国リテール最前線(3/4 ページ)
小売店舗には「消費者との接点を持っている」という強みがあります。これまで、オフラインの小売店はオンラインの小売店に比べて広告では稼げないとされてきましたが、状況は変わってきているようで――。
強みはAI搭載エッジコンピューティング
クーラー・スクリーンが提供する扉には、エッジコンピューティングとAIが搭載されており、また、棚の中にはセンサーが設置されています。品切れ商品の通知や、価格管理システムなどもあり、広告主であるメーカー企業に対して、さまざまなPOS関連のデータを可視化する分析ツールを提供しています。
分析ツールからは、広告ごとの売上指標や、品切れ商品の状況、増加した売上機会の数値などの情報を得られます。これにより、例えばグーグル広告などで広告運用を行っているデジタルマーケターがキャンペーンのパフォーマンスをモニタリングするように、自社ブランドの広告キャンペーンをそれぞれの店舗の冷凍棚で表示したときの経済的効果をモニタリングできるようになっています。
AIがどのようなところで使われているかは公開されていませんが、IoTデバイスから取得するデータを使って品切れ検知を行うモデルや、プロモーションの最適価格レコメンド、広告主から提供される広告在庫と広告表示順序などを最適な組み合わせにすることで、広告主の費用対効果を最大化させる配信システムの中などにAIが使われているのではないかと考察できます。
クーラースクリーンが提供する機能は以下のようにまとめられます。
Cooler Edge(クーラー・エッジ)
店舗で消費者とのタッチポイントとなるテクノロジープラットフォーム。物理的なショッピング環境にエッジコンピューティングを直接組み入れることで、最高の消費者体験を提供。また、「アイデンティティーブラインド」という消費者のプライバシーを重視した設計になっているため、消費者の機密データが収集、使用されたり、危険にさらされたりすることは一切ない。この安全なAPIを使用することで、小売業者やブランドはクーラー・エッジの機能を拡張し、カスタムアプリケーションと統合できる。
Cooler Media(クーラー・メディア)
マーチャンダイジングおよび広告キャンペーン策定アプリケーション。小売業者やブランドに対して、戦略的なコンテクストプロモーションやデジタルプロノグラム(商品配置)のデザインを提案するほか、効果的な商品ディスプレイやリアルタイムでの価格設定を行う機能を提供する。小売業者やブランドは、このクーラー・メディアを使用することで、消費者が店頭で購入の意思決定を行う重要な瞬間を有効に活用できる。
Cooler Analytics(クーラー・アナリティクス)
独自の分析エンジンにより、消費者行動、プロモーション効果、在庫、コンプライアンスに関する深い洞察を提供するツール。大規模なデータインフラのほか、機械学習やその他の高度な分析技術を用いることで、消費者の行動パターンをリアルタイムで可視化する。
Cooler Marketplace(クーラー・マーケットプレース)
メーカーやブランドはクーラー・スクリーンの広告枠を購入し、キャンペーンを管理できる。クーラー・マーケットプレースでは、オファーの内容・配信時間・配信場所・配信対象等を細かく最適化する。さらに、キャンペーン管理、A/Bテスト、分析、イールドマネジメント、需給最適化など、広告ライフサイクル全般をサポートする。
これらの機能の中でも、クーラー・マーケットプレースには特筆すべきものがあるといえます。広告主は、冷凍棚の扉1つ分、複数分、または扉の中のバナー広告、商品の成分に関する広告など用途に応じたさまざまな大きさの広告が選べることが特徴です。
では、実際のところ、クーラー・マーケットプレースではどれくらいの広告効果が見込めるのでしょうか。
関連記事
- 【解説】ウォルマートのIoTは、何がすごいのか
ウォルマートの業績が好調だ。背景にはIoT活用があるという。同社のIoT戦略や運用の何がすごいのか、またコロナ禍でどのようなことに役立ったのか。解説する。 - 人気レジャー施設が「現地払いのWeb予約」をやめただけで、売り上げ2.5倍以上に──なぜ?
「ファンモック」という空中アスレチックが楽しめるPANZA宮沢湖では、予約システムを見直し「現地払いのWeb予約」をやめたことで、月商が平均して2.5倍以上になった。なぜそれほどの効果があったのか? 話を聞いた。 - 「転職は裏切り」と考えるザンネンな企業が、知るべき真実
「お前はどこに行っても通用しない」「転職は裏切りだ」──会社を去ろうとする若手社員に、そんな言葉を投げかける企業がいまだに存在する。そうした時代遅れな企業が知らない「新入社員の3割が辞めてしまう理由」や、「成長企業できる企業の退職者との向き合い方」とは? - 「働かないおじさん」と本気で向き合い、解決するには
自社のミドルシニアが「働かないおじさん」となってしまっている――そんな場合、どのような対策ができるでしょうか。行動変容を促すための、5つのポイントを紹介します。 - アマゾンが作る「アパレル店舗」は成功するのか?
米アマゾンは今年、新たなアパレルストア「Amazon Style」の出店を計画している。しかし、Amazon 4-StarやAmazon Booksの撤退が決まるなど、アマゾンの実店舗事業は苦戦している。そんな中、このAmazon Styleは成功できるのだろうか? シリコンバレー在住の筆者が考察する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.